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第62話

「すいません、先生。空がいつもお邪魔しまして」 「いえ。俺も空くんといると楽しいですから」  翌日、家へと帰って来た空は、再び地球での両親に催眠暗示をかけ、無事新しい家族を取り戻した。  つい十数時間前は冷たく追い払われた雪人も今は空の面倒をよく見てくれる好青年の家庭教師という立場を取り戻せている。  雪人と母親が談笑している傍で、空は盛大なふくれっ面をしていた。  昨夜、雪人が言いかけた言葉の続きを教えないので拗ねているのだ。 「空、いい加減に機嫌を直せよ」  母親がおやつのエクレアを置いて出て行き、二人きりになった部屋で雪人は苦笑した。 「だって雪人が意地悪するから」 「意地悪なんてしてないだろ」 「だったら、昨日言いかけたことの続き教えてよ。雪人なにか隠してるだろ」  今は茶色がかった空の瞳が挑むように雪人を見つめて来る。 「……もう少しオレの中ではっきりと整理できたら教えるから」 「やだ。今教えて欲しい」  強いまなざしで真っ直ぐに雪人を見て、 「教えてくれるまで、絶対に勉強しないから」  とうとうそんなわがまままで言い出した。 「そんなわがまま言うと、俺の方も意地悪してやるぞ」  そんな言葉を放つと、雪人は空の体をカーペットの上に押し倒した。 「なっ……雪っ……下に母さんがいるのに、なにやってるんだよっ。……っあ……」  脇腹を撫で上げると過敏に反応した空がなんとも艶めかしい声を上げる。 「そんなエロい声出して、下のお母さんに聞かれたらどうするんだ?」 「だった、ら……そんなとこ、触るな……」 「それじゃちゃんと勉強するか?」 「…………隠し事されるのは、嫌だから、教えてくれるまで絶対に勉強は、しない」  快楽に浮かされた声を出しながらも自分の意見を曲げない恋人に雪人は溜息をついた。 「おまえには負けたよ」 「じゃ、話してくれるんだね?」 「ああ……でも、これは俺の勝手な考えにすぐなくて、まだ想像の段階だから。いいな?」 「うん」  いったい雪人が何を言い出すのかと、空がごくりと唾を飲み込む。 「俺たち、何度も体を重ねて一つになるうちに、お互いが混ざり合い出したんじゃないかなって思って」 「……え?」  空が大きな目を瞬かせる。 「テレパシーで通じ合えたこともそうだし、俺の頭の傷が直ぐに治ったことも、それで説明がつく。おまえの体質に俺が影響を受けたとしか思えない」 「雪人……」 「おまえの方にもそのうち地球人の要素が現れるのかもしれない、空」 「じゃ、じゃあ俺たちは地球人とかエイリアンとかそういった壁を超えたって、こと?」 「まだ確証には至ってないけど、いずれ分かる日が来ると思うよ。だろ? 空」 「雪人っ……」  空が雪人に強く抱きついて来た。  その細い体を抱きしめ返しながら、雪人は思う。  俺と空が混ざり合うことで、何を得て、何を失うことになるのかまでは分からないけど。  ただ一つ確かなことは、  二人は、体も心も、存在さえも一つになれるという真実――――。

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