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トレーの上、空になった入れ物が乗っている。
寛也「さて、行くか」
席を立とうとする寛也を見て
智之「寛也さん」
寛也「ん?」
名前を呼ばれて嬉しそうな表情の寛也。
智之「どうして僕と天子さんの邪魔をするんですか?」
真っ直ぐな目で智之が寛也に尋ねる。辺りの音がなくなった気がする。
寛也「心配だからだよ」
智之「っ……」
寛也の言葉を聞いて智之がグッと唇を噛む。
智之「僕と天子さんを別れさせたいんですよね? 妹さんが心配なのは分かります。でも、自分で言うのもなんですけど、僕は真面目なほうの人間です。だから、心配ありません。おかしなことを言って天子さんを惑わすのはやめてください。それと僕たちの家から出て行ってください。では」
二人分のトレーを持って席から離れる智之。ずっと眉間に皺が寄っている。
寛也「おい、どうやって帰るつもりだ?」
智之「電車で帰れます」
後を追って来ようとする寛也に早口で答えて早足で去って行く智之。
寛也は悲しそうな表情で、去って行く智之の背中を見ていた。
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