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新月の夜の秘め事

「やっ、アレクっ、やだ、やあっ……」  アレクは犬の姿の時にペニスを舐めることは止めないばかりか、あの初めての夜を境に、後ろの窄まりの方に尚更興味を持ってしまったらしく、ぐずぐずにとろけるまで舐め回すようになった。まるで、次の新月の夜が待ちきれない、と言うように。もしくは、新月の夜までに完全に慣らしてしまおうと言うように。 「やっ、やだ、だめ、やぁあっ」  穴の中に捻じ込まれ、往復する舌の感触は既に気持ちの悪いものではなく、体に馴染んだ情欲を煽るものでしかない。毎晩欠かさず、体に教え込まれ、その度にますます自分が淫乱になっていくのを感じながら乱れる。 「アレクっ、もっと……」  そしてつい強請るように甘えた声を出してしまった時。アレクが舐めるのを唐突に止めた。 「……アレク?」  今夜はここまでか、と物足りなくさえ思えてしまったのだが。 「あっ、ちょっと、何して」  窄まりに何か硬いものが押し当てられるのを感じ、まさかと思って慌てた。見下ろすと、案の定、それは犬のアレクのいちもつで、空哉に伸し掛かったまま入れようとしてくる。 「まっ……アレク、流石に無理っ」  人間のものより大きく感じるそれは、ぱんぱんに張りつめており、入り口をつついてくる。しかし焦りを覚えたのは最初だけで、アレクが犬のままで入れることには流石に苦心しているのを見て、おかしみが込み上げてきた。 「無理だろ、新月まで取っておこう」  思わずぽろりと、自分も人のアレクとの交わりを待ち望んでいると取られてもおかしくない台詞を零すと、アレクはようやく諦めて空哉の上からどいた。そして、全身で喜びを表現しながら空哉の顔を舐めてくる。 「ちょっとくすぐったいって。こうしていると、普通の犬にしか見えないんだよな」  アレクの頭を撫で回しながら、くすりと笑う。新月の夜が今から楽しみだった。体の交わりを抜きにしても、アレクと言葉を交わせることは空哉も嬉しい。その代償として後どれぐらいの時間が残されているかを考えるのは、今はまだよそうと思い、アレクにしがみついた。    そして、待ちに待った新月の夜が訪れた。アレクとの大切な逢瀬を無駄にしないようにと、今回は携帯をいじりながら、ばっちり目を覚ましてその時を待っていた。  深夜一時。ようやく家族が寝静まったようで、静寂が辺りを満たしている。暗がりの中で、携帯の明かりを頼りにアレクを見守っていると、変化が訪れた。アレクが次第に膨張していき、人の形を取っていくと、空哉よりも立派な体格の色男が現れる。そして、今回も目のやり場に困ったのだが、お約束の全裸だ。 「くうや」  他の単語はすらすらと話すくせに、空哉の名前だけは何故だかいまだに少し舌足らずに言う。漢字を当てはめきれないのだろうか。見た目は完全に成人男性で、空哉よりも明らかに年上なくせに、そういうところに愛嬌を感じられる。愛犬に感じるのと同じ庇護欲のような、母性愛ならぬ父性愛のようなものをくすぐられて、思わず頭を撫で回したくなり。 「く、くうやっ」  気が付けば本当に髪を掻き回していた。アレクが慌てたように声を上げる。普段いやらしいことばかりしてくるくせに、これくらいで何を焦っているのかと微笑ましい気持ちになる。 「アレク、可愛いなお前」  調子に乗っていると、不意にアレクの腕が伸びてきて、そのまま引き寄せられた。高い体温の肌に直に触れて、アレクの肩口に唇が触れてしまう。 「アレク……」  散々体を重ねたが、こういった穏やかな抱擁を受けたのは初めてだ。そこにアレクの親愛の情が感じられる気がして、ドキドキと鼓動が高鳴った。空哉の方からも腕を回そうとした時、アレクは僅かに身を離したかと思うと、間近で顔を覗き込んでくる。  そして、唇が探るように頬に触れてきた。キスをしたいのだろうが、この距離でも互いの唇 が正確に判別できず、少しばかりもどかしい。そう言えば2回目の逢瀬の時は、電気をつけっぱなしにしていたのだが、今はうっかりつけ忘れてしまっていた。それが悔やまれる。 「アレク、待て。電気をつける」  やんわりとアレクの体を押し、スイッチを探して壁際に向かった。するとアレクは僅かでも離れるのを惜しむように、背後から下腹部に腕を回してぴったりとついてくる。 「歩きにくいって」  思わず笑ってしまいながら、照明を調整し終えた途端に。 「わっ、アレクっ……んぅ」  些か強引に振り向かせられたかと思うと、あっという間に整った顔が接近してきて口付けられた。目を閉じる暇もなかったので、焦点が合わないほど間近に切れ長の瞳と視線が絡む。怖いほど情熱的な目つきに当てられて、腰の奥がぞくりと熱を帯びた。 「ん、んぁっ……」  それ以上目を合わせていると、目で犯されてしまいそうな錯覚に陥りそうで、慌てて閉じた。その瞬間、アレクの舌先が口の中に侵入してきて、貪欲に貪られる。まだ口内しか犯されていないというのに、勝手にその先を期待して腰が戦慄いた。 「んっ……は……」  キスから解放された途端に、喘ぎながら彼を見上げる。自分でもまるで誘うような目付きをしてしまったと思う。 「くうやの方が可愛いよ。もうこんなにさせて」 「っぁ……」  アレクの大きな手のひらが空哉のズボンの前に触れ、形をなぞった。明らかに兆し始めているそれを、やわやわと揉まれ、それだけでびくびくと震えてしまう。 「やっ……」 「嫌だって言いながら感じてるくうや、最高に可愛い」  可愛いと何度も称賛されながら、耳朶を舌先でなぞられると、羞恥心も手伝って余計に感じてしまい。 「っひぁ……」 「くうや、耳弱い?」  確かめるように何度も耳をなぶられ、高い声を漏らしてしまう。 「ちがっ、弱くない、やだ、やぁ……っ」  言葉とは裏腹にペニスは素直だった。アレクが耳の中にまで差し込んでくると、彼の手の中でむくむくと成長してしまい、嘘は簡単に見抜かれてしまう。 「ひゃあ……っ、や、やぁあ」  アレクは一度始め出したら、どんなに嫌がって見せてもとことん飽きるまでやめない。それが、空哉が本気で嫌がっているわけではないと分かっているからなのかは分からないが、今回 もそうだった。ペニスを巧みに扱きながら、耳の中を股間や窄まりに見立てて舐めたり、抜き差ししながらこれでもかというほどいたぶり尽くした。 「んっ、ぁあ」  耳への刺激だけで腰砕けになってしまった時、ようやく満足したのか、アレクが耳を解放し、ズボンの中に手を入れてきて。 「やっ、ぁ」  待ち望んだ愛撫を始められて、身悶えしていると、するりとズボンを下ろされて、双丘を揉むように撫でられた。そして、割れ目を辿って長い指先が窄まりを探り当てると、ぐりっと押し込まれてきた。 「っ……」  アレクの舌で散々慣らされてきたのだが、指と舌では硬さも全く違う。流石に痛みを感じて呻くと、アレクは指を抜いて空哉を抱え上げた。その時に欠かさず足に絡まったズボンも下着も取り除かれ、下半身だけ晒した心許ない格好で布団に下ろされる。  アレクが当たり前のようにフェラを施しながら、唾液と精液を窄まりに塗り込み、孔を解していくと、窄まりがきゅっと期待に収縮したのを感じた。 「アレクっ」  きて、と言えたのかどうか。掠れた言葉尻を吸い取られるように口付けを受け、中に硬く熱を持ったものが押し入ってくると、情欲とともにどこか安堵を覚えていた。 「アレクぅっ……んぁっ」  甘えた声で名前を呼んだ途端、中でアレクのペニスが膨らみ、奥に突き入れられると、いい場所に当たって高い声が漏れた。 「やっ、……ぁっ、あン」  ぎりぎりまで抜かれたかと思うと、すかさず深いところまで入れられて、を繰り返し、訳が分からなくなるほど感じてしまい、女のような声を上げてあっという間に昇りつめた。 「やっ、イク……っいっちゃう」 「いいよ、一緒にイこう」  アレクに優しく促され、それでいて激しく揺さぶられて。 「ンンンッ」  大声を張り上げて達しそうになった寸前、慌てて唇を強く噛んだ。それに気が付いたのか、アレクが口付けで覆ってくれて、声は漏れずに済んだことに安堵したが、中に熱く注ぎ込まれた劣情を後で取り除かなければならないことは、なんだか残念に思えた。秘め事は決してばれてはいけないのだから、仕方がないのだけれど。 「くうや、可愛かった。俺の愛しいくうや」  愛を囁かれながら抱き締められて、空哉は泣きたいような切なさを覚えた。アレクとのセックスに病みつきになっているのは言い逃れできない事実だが、それよりもアレクに愛されていると感じる瞬間が至上の幸福感をもたらしてくるのだ。  それが既に愛犬と主人との情を超えていると認めながら、空哉はアレクに囁き返した。 「俺も、アレクが大好きだよ」

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