4 / 7
不意打ちの告白に2
それから、これまで以上にアレクとべったり過ごすようになった。遅刻ギリギリまでアレクと戯れ、寄り道もせずに真っ直ぐ帰宅し、寝る時も一緒にベッドに入る。その間、アレクが空哉のぺニスや後ろの窄まりにしつこいほど刺激を与え続けたのは言うまでもない。
その結果、困ったことに、空哉は次第にアレクに舐められることだけでは満足できなくなりつつあった。それも当然の流れかもしれないが、これ以上の快楽を求めるとなれば、人型のアレクとしか成し遂げられないのである。
「いやいや、そもそも俺は、アレクと何をしようっていうんだ。人型になっても、野郎同士でできるのか?」
純粋な興味だと言い訳しながら、ネットでそれとなく検索してみた。そして衝撃の事実を知り、思わず携帯を取り落とす。
「マジかよ、できるのかよ……」
呆然と呟いた時、アレクが近付いてきて、携帯の画面を覗き込もうとし。それを寸前で拾い上げて見えないようにした。
アレクが怒ったようにワンと吠えたが、見せる訳にはいかない。あの内容を調べたことを知られるのは恥ずかしかった。今夜は新月なのだから、余計に。
「よしよし、アレク。怒るなって。文句は後で聞いてやるから」
頭を撫でて宥めてやると、それだけで機嫌が直ったのか、それとも空哉の言葉通りに後で文句を言うことにしたのか、アレクは大人しくなった。それから、アレクとじゃれあっているうちに、自然と目蓋が重くなっていき。気が付けば眠りについていた。
それから、どれぐらいの間眠っていたか分からない。アレクを抱き締めて寝ていたらしいが、ふと夢から覚めると、毛皮の感触が人肌のものに変わっていることに気が付いた。ゆっくりと目を開けていくと、眼前に男前の顔が。
「くうや、おはよう」
にこりと微笑まれ、つられて笑い返し、次いで叫び声を上げかけて、寸前で堪えた。
「あ、アレク……っ」
「この姿で会えるのは二回目だね」
二回目だと言うのに、どうしてアレクはすらすらと話せるようになっているか謎だったが、そんなことよりも、この距離は目の毒だ。そう思って離れようとしたのだが。
「アレク、ちょっと動けないんだけど」
「ん?」
「ん?じゃなくて」
がっちりとホールドしているくせに、笑顔で惚けている。この様子を見るからに、やはりあの犬のアレクと同じだと思う。妙なところで再確認すると、途端に離れようとする気が失せた。
「くうや」
「んっ」
ぐっと顔を近付けてきたかと思えば、唇をぺろりと舐められた。もしかすると、キスを知らないのだろうか。見た目がこの姿になったとしても、人と人の交わりを彼が知るはずもない。それに思い当たると、自ら唇を寄せていた。
「くうや?」
軽く触れ合わせるだけのバードキスだったが、してしまった後に恥ずかしさを覚える。不思
議そうにしているアレクに向かって、教えてあげることにした。
「今のがキスって言うやつだ」
「キス?へえ、人間はこんなことするんだ。くうや、もっと教えて」
言うなり、今度はアレクから唇を合わせてきた。
「んぅ……あっ……」
合わせたままべろりと舐められ、思わず口を開けてしまうと、アレクの舌先が唇の割れ目を辿り、押し開けて前歯をつついてきた。教えてと言いながらも、まるで何をするのか知っているようだ。空哉がおずおずと誘導し、口の中にアレクの舌を招き入れると、好き勝手に蹂躙し出した。
「んっんぅ、……んむ」
アレクの巧みな舌使いはやはり健在らしく、あっという間に空哉をとろけさせた。隅々まで味わい尽くして、それでも尚、夢中で覚えたてのキスをしてくるアレク。空哉も夢中ではあったのだが、体の奥が刺激を求めて疼き始めて。
「ん、っぁ……」
僅かに唇が離れた途端に、悩ましげな喘ぎ声が漏れてしまう。それに気が付いたアレクが、キスを止めて起き上がると、体をずらしていき。
「えっ、ぁあっ」
ずるりとズボンを下ろしてきて、アレクの好きな空哉のペニスがぶるりと外に解放された。そして、いつものようにアレクはペニスを舐めてきたのだが、気持ちよさに悶えながらも、舐める以外のこともしてほしいと思って。
「あ、アレクっぁ、口に入れ、てっ」
空哉に促されるままに、アレクは初めてなのに躊躇いなく口に含んだ。しかし、やはりどうすればいいのか分からないのか、それともわざと空哉に言わせようとしているのか、含んだまま制止して見上げてくる。
「そのまま、口使って、上下にっ……あ」
羞恥心をかなぐり捨てて教えていくと、アレクは従順に言われた通りにフェラをやっていき、驚くほどの早さで習得してしまう。そして目が眩むほどの快感を受け、あっという間に昇りつめた空哉は、口を離すように言ったのだが。
「っあ、お願い、離しっ、出ちゃうからっ、……っああ」
アレクが空哉の言うことを聞かなかったので、そのまま精液を口の中に放ってしまう。そしてあろうことか、飲み込んでしまった。
「アレクっ、ちょっと、今、飲ん……」
「飲むものじゃないの?」
「違う、飲まなくていいやつだから」
「そう?美味しいんだけど」
「美味しいって……」
そんなはずはないだろうと、恥ずかしいやら呆れるやらで言葉をなくしていると、アレクはもう満足したのか、空哉の隣に来て眠る体勢に入ろうとする。
いつもならば、空哉もこれで満足なのだが、この先のことを知ってしまったからには引き下がれない。
「アレク、あの……」
意を決して呼びかけると、アレクは先に続く言葉を待ってじっと見つめてくる。
「この先のこと、やってみたくないか」
「この先って?まさか、交尾のこと?」
「こうっ……ああ、そうだな。人間ではセックスって言うんだが、動物のお前は交尾って言うんだもんな」
「でもくうや、俺たち雄同士だし、そんなのできるの?」
ここまでしておいて、何を今さらと思わなくはないが、無理はない。空哉でさえさっき初めて知った新事実がある。
「できる、らしい。教えてやる」
本当は人に教えられるほどではないのだが、そこは見栄を張って言った。
「ほんと?やった、俺ずっとあなたとすることを夢見ていた」
そう言われて悪い気がしないどころか、嬉しい気持ちが生まれてきて思わず照れ笑いを浮かべると。アレクはきらきらと瞳を輝かせて、空哉を押し倒してきて。
「それで、どうやるの?」
純粋な顔で、口にするのも恥ずかしい行為のやり方について聞いてきた。それが、あまりにらしいので、初めてのことに対する緊張も忘れ、笑ってしまった。
「ぁっ、ああっ、やっ」
学習能力が高すぎるアレクは、あっという間にコツを覚えてしまうと、驚くほど的確に中を突き、空哉を何度も何度も啼かせ続けた。家の中にいる家族に聞かれないように、極力声を落としながらだったが、何度大声を上げかけたか数え知れない。
そして、アレクとの初めての行為は明け方まで続き。怖いほど感じ過ぎた体を抱き締められながら、ようやく終わった時には、腰が悲鳴を上げていた。
「アレク、初めてでがっつきすぎ」
涙目になりながら睨むが、アレクは満足そうに、心底幸せそうに微笑むので、それ以上怒れなくなってしまう。
「俺はくうやとこういうことできて幸せ。くうやも気持ちよさそうだった」
「ぐっ……」
図星を刺されて言葉に詰まっていると、朝陽に照らされていたアレクの姿が、みるみるうちに変化していく。完全に犬の姿に戻ってしまう間際のことだった。
「くうや、大好き」
不意打ちで真っすぐな告白に、かっと顔に熱が上った。それは単なる愛犬から主人に対する好意なのか分からない。分からないのだが、あそこまでのことをして、それだけだとしたらショックもある。ショック。
「俺は、何を」
瞠目し、戸惑う空哉。犬のアレクが愛くるしい声で問うようにくうんと鳴いた
ともだちにシェアしよう!