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君色の幸福 01

*線路の高架下(夕方の下校時間)  投げ出された学生鞄。諒一の目の前で一哉と他校生3人が殴り合いをしている。 ■モノローグ 諒一  それは俺、峰岸諒一にとって見慣れた光景だった。  多対一だというのに殴られるのをものともせず、他校の生徒を次々と地面に這わせる男の名を、俺はよく知っている。  松井一哉。同じ高校の同級生だ。  電車の通過する音。続いているケンカを諒一が眺めている。 ■モノローグ 諒一  俺が三人の男たちに絡まれたのは、今から十分ほど前の事である。暴力で脅し金銭を要求する、所謂カツアゲというものだ。  身長はそこそこあるものの、俺自身の外見がどうやらターゲットにされやすいという事には気付いている。それに、家庭環境も。  確かに家は一般家庭と比べると裕福であったかもしれない。だが、この他校生たちが俺の父親が警察官僚である事を知っているかどうかは疑問だ。そして、俺が一哉の親友であるという事も彼らは知らなかっただろう。  地面に這う3人の他校生。切れた口の端を拭う一哉。 諒一「ありがとう一哉。助かった」 一哉「あぁん? 別にただの憂さ晴らしだし」

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