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第4話 ※
触れたキスが深くなって、口の中を探られる慣れない感覚が、すぐに甘い疼きに変わった。身体を辿るように滑った手に押されるまま、縺れるように部屋に入る。ベッドにどさりと倒された瞬間、窓の外の青空が目に入った。
「晴れてるのに、いいのか?」
「その設定はもういい」
飴村がカーテンを引いた。追いやられた青空が、隙間からほんの少し覗く程度の大きさになる。
「設定!?」
「雨の日なら、安宿がおかしいと思っても言い訳できたから。もう必要ないだろう?」
「……いつから?」
「安宿が俺を雨宿りさせてくれるようになったころから、ずっと」
「嘘だ」
「なんで嘘なんだよ」
呆れたように飴村が笑う。声も表情も、今までに見たどんな飴村よりも甘く感じて、心臓が騒いでうるさかった。
服の上から身体を探る飴村の指が、つんと片方の乳首を弾いた。
「……っ」
「安宿に最初に手を出したとき……雨に濡れたここがうっすら透けてて、友達でいいと思ってた理性が死んだ」
「え」
俺の声から否定的な感情を読み取ったのか、飴村が苦笑交じりの声で「今日まで我慢して正解だったな」と言った。言いながら、弾いたり摘まんだりを繰り返されて、そんなことして楽しいんだろうかと呆れたように思ったのに、むずむずするようなびりびりするような感じがしはじめて、俺はとっさにその手を剥がした。飴村が、察したようににやりと笑う。
「素質がありそうだな?」
「な……っ」
飴村の手が、服の上からちんこを揉んだ。すっかり反応してしまっていた。飴村の手が腰から潜りこむ様子を目にして、何度も触れあってきた筈なのに、恥ずかしくてたまらないような気持ちになった。それもそうだ。今まではばらばらに脱ぎあって、さっさと出して終わりだった。それが……。
飴村が取り出した俺のちんこを口に含んだから、びくっと身体を震わせた。
「……っ、飴村、ちょっ……あっ」
飴村の口の中は熱くて、絡んでくる舌はぬめぬめしていた。このまま続けてほしい誘惑に流されそうになりながら、必死に飴村の顔を押すと、飴村の口からちんこが零れた。
「こんなこと、したことないだろう」
抗議めいた俺の声に、飴村は平然とした声で「だからするんだろう」と言うと、俺のちんこを舐めあげた。
「ん……」
根元から先端へ舌をゆっくり這わせてから、飴村の口が先端を含む。身を委ねていいものかと逡巡しているのを知っているみたいにちんこの周りを撫でられて、戸惑いながら力を抜くと、飴村の口に吸い上げられた。濡れた音を立てて扱かれて、一気に追い上げられてしまう。
「……っ! あ、飴村、あ、やば……っ」
髪を掴んで止めようとしたけれど、飴村の口は離れなかった。目蓋の裏がちかちかして、限界が目の前だということがわかった。
「だめ、飴村、出る、から……! ほんとに……っ!」
指と口の両方で刺激をしながら、飴村の舌が先端のくぼみをぐりぐりする。こいつ絶対確信犯だと思ったけれど、思考はすぐにどこかに行って、俺は呆気なく達してしまった。
今までで一番早かったことを嘆いていると、伸びあがってきた飴村にキスをされた。至近距離で見る飴村の涼しげな、つまり余裕の表情になんとなく腹が立ってきて、飛びかかるように飴村を倒した。後ろ手に身体を支えて踏みとどまった飴村の、驚いた顔にすっとしながら、飴村のちんこを取り出した。飴村のちんこは、涼しい顔とは対照的にしっかり反応していた。
「安宿、待った!」
もちろんそんな制止は聞かずに、舌を副わせて口に含んだ。飴村の身体がびくっとした。先端を吸ったり、舌を這わせたりしながら、飴村のちんこを指で扱く。飴村のようにスムーズにはいかなかったけれど、飴村のちんこが口の中でさらに膨らんで、飴村が息を漏らすのがかすかに聞こえて、俺まで腰がむずむずしてきた。
「……っ」
飴村が頭上で息を詰めて、肩を掴んだ手に引きはがされた。思いがけずすっかり余裕のないものに変わっていた表情に、呼応するようにじんと痺れた。えろい顔のまま笑った飴村が掠れた声で「ありがとう」と言って、今度は胸がぎゅっとなった。
「飴村が出すまでする」と食い下がったのだが、飴村は短く「いい」と言うと、俺の足からスウェットと下着を剥ぎとった。さっき出したばかりとは思えない俺のちんこを緩く扱いた飴村の指が、するっと下の方まで滑る。
「……!」
俺の視線に、飴村が綺麗な顔で笑う。
「指だけ」
「いやいやいやいや、無理だろ」
「無理かな」
擽るように指が動いて、それが想像よりも気持ち悪くなくて、力が抜けそうになってしまった。でも、簡単に侵入されてなるものかと、慌ててぎゅっと力を入れる。
「ひくひくしてる」
「してない……っ!」
会話の途中、様子を窺うようにつつかれて、流されそうになりながらも必死の思いで首を振ると、指はあっさり退いた。
「まあ、ここについては要話し合いだな」
その、交渉の余地のありそうな態度に、さすがは飴村だときゅんとしかけて、いやいやいやと思い直す。尻を狙われているのに変わりはない。しっかりしろ、俺……!
「安宿」
身を乗り出してきた飴村と舌の絡むキスを交わす。覚えたての気持ちよさに夢中になっていると、たっぷりとえろい気分が戻ってきて、飴村のちんこに指を絡めた。触れている飴村が少し震えて、いつもよりも余裕のない、泣きそうにも見える目が俺を見た。胸の奥がぎゅっとなって、飴村が気持ちよくなるようにと指を動かすと、息を詰めた飴村が身体を起こして、俺の指と二人分のちんこをまとめて掴むと、二本まとめて扱きはじめた。
「……っ」
飴村の指に合わせながら、二人分のちんこを刺激する。どうしても不揃いさの残ってしまうその刺激に、けれどしっかり煽られて、どちらのものともわからない先走りが、とろとろと零れて指を汚す。限界が近い。いつもの癖で堪えようとした俺は、目の前に苦しそうな飴村の顔を見つけて、今日はいいか、と思い直した。俺にプライドがあるように、飴村にだってあるだろう。いつもより苦しそうな飴村の顔を見て、そう思った。
「――あっ!」
やってきた波に身を任せると、飛び出した精液が胸を汚した。飴村もまた動きを止めて、気持ちよさそうな息を零した。
恋人になった飴村と、晴れた日の真っ昼間から恋人っぽい行為に明け暮れた翌日、目覚めると外は暗かった。さらさらと雨の音が聞こえて、腰のあたりがじんと痺れた。
「雨の日になるとえろい気分になる」という話について、飴村は「その設定はもういい」と言ったけど、俺の方はよくなかった。さらさらと続く雨音に、あんなに散々出したのに、またえろい気分になりそうで、傍らの飴村をじとっと見つめた。
視線に気づいて笑った飴村は、俺の首筋に指を滑らせて、服の上から身体を撫でた。ゆるゆると可愛がるように触れていた手が、服の上からちんこを掴む。
「――っ!」
「安宿は雨の日が好きだよな」
揶揄うような声にむっとして、「誰のせいだ」と文句を言うと、「俺のせいだな」と飴村が言って、額に優しいキスが落ちた。
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