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Ⅰ きれいな嘘②
着信は飯田 先生だった。
お粥を素早く食べ終えて二階の自室に上がった俺は、国際電話の通信を繋ぐ。
「やぁ、すまないね。こんな時間に」
「大丈夫です。どうかしましたか」
「君が困っている事はないかと思って」
「そんな……」
漆黒の瞳に見つめられて俯いた。
「困ったね。もっと顔をよく見せてほしいな。君の健康診断は私の仕事だよ」
「はい」
口角を微かに上げた先生の顔が飛び込んでくる。
「いい子だね」
モニターの向こうで黒髪を掻き上げた。
「顔色はいいようだ。変わったところはないか?体が痛むとか……だるいとか」
「特に、これといって」
「ならいいんだが」
どうしたんだろう。
今日の先生は心配性だ。
特に持病がある訳ではない。
再婚したから笹木家が裕福で、俺は主治医の飯田先生の定期検診を受けている。
「明日、日本に行く。会えるかな?」
「エエエーッ」
そんなの聞いてない!
「いま君に初めて伝えた」
「突然すぎてっ」
「そうだね。突然だけど、時間をつくってほしい。私と会ってくれるかな?」
「ははは、はいっ」
「いいお返事だ」
それでは、明日の夜
「はい!」
(明日こそ、ミスしないようにしなくちゃ。残業になったら先生に会えない)
「君に受けてもらいたい検査があるんだ」
……あ。
そうだよね。
先生は俺の主治医なんだから。
(俺、なに浮かれてんだろう)
プライベートで会う訳ないじゃないか。
仕事の一環だ。
「じゃあ、約束したよ」
それでも。ちょっぴり嬉しいな。
よし!明日は残業ゼロ
ノー残業デーだ!
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