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好きの種類 (2)
部屋に戻ったフェルはもらった銀貨を机の引き出しにしまい
土まみれになった顔と手を洗いにバスルームへ行く
「アルバイト料だいぶ貯まったんじゃないか?
フェルってばお菓子も文具もほんの少ししか買わないよな
使い道決まってんの?」
ネヴィルは宿題にとりかかりながらフェルに聞いた
「ふふっ ひみつ~♪」
タオルで顔を拭きながらいたずらっぽく言うフェルは
仲良しの7人とアークライトには顔を見られても平気になっていた
(今日もキレイだなぁ…)
ほぅと見惚れるネヴィルだが
最近では容姿の美しさよりもフェルの話し方や優しい性格に惹かれていた
フェルも机に向かい宿題に取り掛かりだす
(そういえば最近はバスルームでアレしてないみたいだし、どこでやってんだろ)
横顔に見とれつつそんなことを考えていると
「あー!ズルしないでよ~見るの禁止!」
宿題の答えを盗み見てると勘違いしたフェルは
ほっぺをプゥ~と膨らましながらノートを隠した
水曜のおしゃべりの日
いつもは生徒会室でジュリアス様も一緒にだったのが
いつからかアーク様の部屋で二人っきりでになっていた
二人っきりのほうが緊張しそうなものだが
フェルはジュリアスがいた時のほうが緊張していた
お茶を飲みお菓子を食べる
勉強を見てもらったり
ボードゲームで遊んだりもする
「いつもごめんなさい…ボクのせいでお時間取らせてしまって」
申し訳なさそうに言うフェルの口に焼き菓子を1つ放り込みながら
銀髪の美神は楽しそうに笑う
「週に1回の逢瀬を楽しみにしてるんだから
そんな言い方しないでよ」
司教様の突然の配置換えで懺悔室へ行くことがなくなって
今までなら週に3回会えてたのが1回になった
新たな司教様をお願いするかと問われたが
他の人はなぜだか嫌だった
あの司教様に相談するようになって悪夢も殆ど見なくなったし
顔もだんだんと出せるようになった
お名前も知らず突然のお別れになってしまったけど感謝している
アークライト様にも同じく感謝している
あの時 助けに来てくれたこと
いつも気にかけてくれていること
庭師のアルバイトも紹介してくれたこと
お世話になるばかりで何も返せない自分が歯がゆい
それは7人の友たちも同じで
もうあの悪い人たちは退学になったというのに
いつも誰かが一緒にいてくれて守ってくれる
あったかい…みんなの気持ちが暖かで幸せで
こんなに幸せでいいのかと不安になる
―――でも―――
贅沢を言うならばジュリアス様を見たい
あの声を聞き 同じ空間にいたい
ジェイじゃなくていいから…
「ほら こっちもおいしいよ」
アークライトが砂糖菓子の入ったガラスの器を差し出す
一粒つまもうと伸ばしたフェルの左手をアークライトが掴んだ
接触恐怖症が減ってきたとは言え突然の行動にギョッとするフェル
フェルの人差し指をよく見ると
薔薇のトゲによるものと思われるたくさんの細かな傷があった
ゆっくりとその手をアークライトは持ち上げ
自分の顔に寄せるとペロリと舐め上げた
「ひゃぁぅっ…!」手首を掴まれたまま身を竦ませる
「こんなに傷になって…手袋してないの?」
フェルの目を見つめながらも舐める舌は止まらない
動悸が激しくなり顔も赤くなっているフェルは
「あ…あります
でも邪魔だから…」
そう返事するのがやっとだった
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