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好きの種類 (1)

いつも授業終わりにフェルが立ち寄る 校舎棟から大聖堂(カテドラル)へ続く並木道にある 周りの木々よりひときわ大きいマルブランシュの木 その場所はフェルにとって あの忌まわしい事件の場所であるはずなのに その後も変わらず通ってきていた あの事件以降 必ず7人の仲良しグループの誰かがついてきてくれていた いつものように大木に抱きつき何かつぶやいている その光景はいつも烟るような光りに包まれ神秘的だった 終わったと思ったら寮へ戻る道すがらも 友人と会話しながら様々な樹木に手を触れ微笑む 「不思議な子だね」 その光景を木々の間から見ていた アークライトがロジェに呟く 「植物を愛しているようです   フェルは暇があればそこらの花や樹とおしゃべりしてますね」と苦笑する フェルの生い立ちを調べようとしたが 街の商人の養子としてこの騎士学院に入学したことしかわからなかった その商人を問いただしても大金をもらってそうしただけで会ったこともないという 父親がどこかの伯爵だと言うこと その父に幽閉されるように暮らした幼児期 伯爵邸に引き取られてからの幼少期の話はフェルから聞けたが 名前も場所もわからなかった 「寮付きのここに放り込んで放ったらかしか…」 ネヴィルによるとお小遣いも持たせてもらってないようだ  この学院での生活にお金が必要かというとそうでもないが やはり衣服や嗜好品や文具などにお金は必要だ ネヴィルや仲間たちがお金を出しあって買ってあげようとしたが拒否されたらしい ************************* 中等部の寮棟から騎士学院に行く途中にある薔薇庭園 噴水を中心として様々な方向にアイアンや木製のローズアーチが設置され 赤・白・ピンク・オレンジ・黄色の薔薇が咲き乱れている たくさんの庭師に紛れて小さな金色の頭が薔薇のトピアリーと格闘していた その一画は薔薇の木を等間隔に植え 枝を真っ直ぐに伸ばし上部をこんもりとさせた薔薇のトピアリーが沢山植えられている すぐに生える新芽をハサミで切り取り美しい円形になるよう整える 庭師に教えてもらいながら一生懸命に作業しているのはフェルだった アークライトの助言により週に2回庭師の手伝いをすることになった そのことで少しのアルバイト料を得ることができた (大好きな植物のお世話の仕方を教わった上にお金もいただけるなんて) 感謝でいっぱいだった 「今日はもういいですよ お疲れ様でした」 そういい庭師は銀貨を1枚フェルの手のひらに握らせた 「ありがとうございますっ!」 腰を90度に曲げ深々とお礼を言いポケットに銀貨をしまう 地面に散らばった葉を集め、使っていた道具を片付け作業を終えたフェルは 再度お辞儀をして寮の方向へ走り出した 薔薇庭園の出口付近で談笑しながらフェルの作業終わりを待っていてくれた ネヴィルとパリスのところに駆け寄る 「ごめんねっ!いつも…待っててもらって」 ハァハァと息を切らすフェルは もうあの分厚いガラスのメガネをしていなかった 前髪は相変わらず唇にかかるほど長かったが 走ってきたためその髪は後ろに流れ顔が少し見えていた 作業のために少し汗をかいたのか 美しい金髪が真っ白な細いうなじにまとわりついている 「ほんと…いつも迷惑ばかりかけててゴメンね ありがとぅ…」 俯きながら上目遣いで言うフェル (かっ…かわぇぇええぇぇぇ!!)ネヴィルとパリスは悶絶した

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