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シグリッド (1)

*****回想 シグリッドとの暮らし*********** 「フェルや 山羊の乳を絞ってきておくれ」 「はい!」 寒さで手が凍えそうな早朝 山羊小屋にいき母山羊の乳を絞る 乳は暖かく 冷えたフェルの手も暖かくなってゆく 乳を絞るフェルの手についた乳を子山羊が舐める 「ごめんね お前の乳なのに…    少し僕たちに分けておくれね」 春になったらこの子山羊ともお別れになる 収入源のない山での生活は 山羊の子を売ることと 小さな畑の作物と シグの木彫りの置物を売ることで成り立っていた 自分にできることは精一杯手伝った 伯爵邸での虐待で心が傷つき悪夢にうなされるフェルを シグの大きなゴツゴツした手は抱きとめてくれた (だいじょうぶ…フェルはいい子だ  何も怖いことはないよ  ほら山羊もパウルも みんなフェルが好きだ  もちろん私だって大好きさ) 抱きしめ頬にキスされる 『ボクは…悪魔の子なんだ! いきてちゃいけ…ないん…』 (どうして?フェルは悪魔の子なんかじゃないよ  わしにとっては天使だよ  フェルが来てくれて とても楽しいし嬉しいよ) 背中の傷をさすってくれる 『ボク…っは 汚い…!』 (汚くなんかない… 何をされたかは知らんが  体に傷はつけれても心までは傷つけられんよ) 『ボクのせいでママは死んだって…』  (そんなことない フェルのせいじゃない) 『ほんとに…?ボクのせいじゃない?』 (ああ 本当だ フェルは何も悪くないよ) 『いきててもいいの…?』 伯爵夫人に打たれたこと 罵声を浴びせられたこと カーティスにされた陵辱の数々 夫人に刺され血を流し倒れるカーティスを 何度も何度も思い出し叫び声を上げるフェルを 大きな暖かな腕が抱きしめてくれた 流れる涙に優しいキスをしてくれた いつまでもいつまでもその大きな腕の中で泣いた (汚くなんかない) (自分から不幸になっちゃいけない) 暖かな言葉と腕に、閉ざしていた心が溶けていくのを感じた (過去は変えられないけれど未来は自分で作れるんだ   負けちゃいけないよ) シグの言葉の1つ1つが染み込んでくる 心配そうに覗き込んでくる老犬パウル いつも1つの小さな木のベッドで一緒に眠った 手伝えることが少しづつ増えていくのが嬉しかった 自分がシグの役に立っているって思えることが喜びだった そんなシグリッドとパウルとの山の生活は 2年で終わった…

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