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ジークフリード (1)

朝の4時 校舎棟の奥の厩舎に集まったフェルたち1年生は 二人一組で馬房のボロ(馬糞)掃除をしていた 早朝のひんやりした空気が心地いい 十数頭いる馬たちはどれも騎士学院の馬丁により手入れされ美しい毛並みをしている 「車社会の今どき馬なんて使うのかね~?」 ボロ取りをしながらボヤくのは フェルの仲間の中で1番陽気なフランツだ 「王室の騎馬隊に入りたいオレは この授業好きだよ」 そういうのはタレ目の色男風のアドリアン 楽しいおしゃべりをしながら それぞれ担当の馬のお世話をする 今日 フェルとネヴィル組みが担当する馬は この厩舎一気難しく いつも生徒たちを困らせる白馬のジークフリードだった ブラッシングしようとする生徒を蹴り飛ばし エサを与えても気に食わないと散らかすこの馬にはみんな手を焼いていた 恐る恐るジークフリードの馬房に入ったネヴィルは さっそく蹴りをくらいそうになり慌てて出てくる 「無理!無理だこんなの!!」 涙目になったネヴィルを教官や仲間たちがケタケタ笑う そんなネヴィルをよそにフェルは ジークフリードの目を見つめ柵越しに手を伸ばす 「やめとけフェル!かまれるぞ」 「そうだぞ 髪の毛なくなるぞっ!」 そんなみんなの心配をよそに 「だいじょうぶだよ」 「ほら…怖くないよ お掃除させて?」 ジークフリードに両手を差し出し近寄る ジークフリードはおとなしくフェルを見つめ しばらくして その手に顔を擦り寄せた 「スッゲー…」 クラス中が驚きの声を上げる 入学以来 ほぼクラス全員が この馬に蹴られ髪の毛をむしられ泣かされてきた 「よし!いいぞ…フェルそのまま押さえててくれ!」 この隙に掃除をしてしまおうとネヴィルが馬房に突入する 見ていた教官も感嘆の声を上げる 「すごいな…この馬を手なづけられたのはジュリアス王子だけだったのに」 気難しいジークフリードは暴れ馬で ジュリアスしか背中に乗せない馬だった 「フェルももしかしたら こいつに乗れるかもな」 ジークフリードの顔に頬ずりする小さな天使に クラス中が見とれていた (なんでこの子はこんなに馬たちに愛されてるんだろう) 今までの授業でも この厩舎にいる馬全てがすぐにフェルを気に入り顔をすりつけていた だが この暴れ馬まで手懐けるとは… 「馬飼ってたことあるのか?」 「いえ 山羊のお世話はしたことありますが        馬はここに来て初めて触りました」 シグと暮らした寒さ厳しい山での生活で山羊は貴重な収入源だった

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