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デート (1)

ボクは生まれたときからこの塔で過ごしていた 塔のてっぺんにある母さまの部屋は美しい調度品で飾られ いつも花であふれていた 母さまはその部屋から出ることが出来ず 囚われの身のようだった ボクと同じ黄金の髪が足首までも伸び 真っ白な天蓋付きのベッドに真っ白な夜着を着て横たわる様は 童話の眠りの姫のようだった 母さまの目はいつも何を見ているかわからないような 夢幻の住人のようだった たまに ボクに意識が向くことが有り その時は美しい顔に微笑みを讃え 「フェ…ル…」と力なく言うのだった あの美しい母はもういない シグもパウルもいない… それでもボクは生きなくてはならないのか (幸せにならなくちゃいけないよ…)シグの言葉がこだまする シグの遺言と いつかジェイに会う それだけを胸に 騎士学院中等部に入学した 入学してからの生活は 幸せすぎて目眩がしそうだった ネヴィルとその仲間たち アーク様  ジェイにそっくりなジュリアス様… 嫌なこともあったけど みんなに守られ過ごす毎日に幸せを噛みしめる (シグ…心配しないで      ボク今日も幸せだから…) ジークフリードが頬を舐めてくれて 過去夢から現実へと引き戻される 「ありがとう ジーク」 フワリと笑い 台の上に乗り大きなジークフリードの体にブラシをかけていく 「フェル明日はでかけるんだろ?」 馬房にワラを敷きながらネヴィルが明日の予定を聞いてきた 毎週末 寮に残りどこにも行く宛のないフェルに仲間たちの 誰かしら一緒に過ごしてくれていた 「うん 明日はアーク様とデートなんだ」ちょっと照れながら言うと 「「「デートオオオオオオオオオオオオ!?」」」仲間たちは叫んだ 「ふふっ お買い物一緒に行くの 街まで」 楽しそうに言うフェルだがデートという言葉に仲間たちは大興奮である 「着ていく服あるのか?!」心配するアドリアン フェルは制服と体操服と夜着以外 服を持っていないのを皆知っているからだ 「制服で行くけど…ダメ?」 困ったように言う天使に胸がツキッと傷んだ 「初等部にいる弟に何か服 貸りてきてやるよ」クリストフェルが申し出てくれた 申し訳無さに断りたいところだが 制服で行くのがおかしいのかもしれないと思い ありがたく申し出を受け取った ーーーー次の日の朝ーーーー 「「「かっわ…いい~!!!」」」 クリストフェルが弟に借りてきてくれた服は 真っ白なセーラーカラーに水色の線が2本入っている上着と 紺色の半ズボンでそれらはフェルに良く似合っていた うっとおしい前髪は ティノにより何か良い匂いのもので後ろに撫で付けられ 美しい天使の顔とオッドアイの双眸が顕になっていた 「ちょ…これ 顔見えすぎ…」 髪を戻そうとするフェルだが 「デートなんだろ!これくらいがんばらないと            アーク様に恥をかかせるぞ!!」 そう言われると言うとおりにするしかなかった (はわ~…フェルの私服姿 殺人級の可愛さだな)全員がそう思った

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