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デート (5)
***アークライト視点***
今日はフェルとの初めてのデートだ!
初めてみた私服姿のフェルの可愛さに心臓の動悸が止まらない
いつもの制服姿も天使だがこの日のセーラー襟&半ズボンのフェルの破壊力は凄まじく
ネヴィルじゃないが鼻血が噴出しそうだった
一緒に車に乗ってからも
繋いだ手は熱く、恥ずかしがるフェルがこの上なく可愛く
運転手がいるのに押し倒してしまいたい衝動に駆られる
「良い天気で良かったね」
車窓の風景を見ながら平静を装い話しかける
いつものように前髪で顔を隠そうとするフェルに
デートだからとお願いし顔を晒してもらう
街に着き車から下りるなり
天使が舞い降りたかのようなフェルの容貌とその美しいオッドアイに街中の視線が集まる
この天使を自分がエスコートしていることが誇らしく
経緯はどうあれPetit frèreとして唯一無二の存在になれたことが嬉しく噛みしめる
初めての買い物に頬を紅潮させ喜ぶ様も可愛らしく
この後もいろいろ楽しませようと考えていた
が
美術館の光景を見てからフェルは元気がない
ジュリアスが女といたのがショックだったのか?
チクンと胸が痛む
(ジュリアスなんか あんな臆病者やめとけよ…
体裁ばっか気にして臆病なあんなヤツより
オレじゃダメか…? )
喉元まで出かかった言葉を飲み込む
メインディッシュを口に運びつつ
「あれは公務だよ 王子の仕事だ
美術館設立に携わった子爵家の令嬢をエスコートしてるだけだ」
と大人なオレはフェルの心情を慮り自分の気持ちを押し込める
「おしごと…?」
「そう お仕事
王子だからな 様々な公務があるんだよ」
「そっか…おしごとか」
元気のなかったフェルが少しホッとしたように見えた
(なんで そこまでアイツなんだ?)
ジュリアスにムカつく気持ちと
フェルへの愛おしさと
自分がどうしたいのかの葛藤で
頭が痛くなってきた
食事を終え書斎の片付けをしたフェルは
明日からも書斎を使わせてほしいと願い出てきた
週1回のおしゃべりだけでなく
こうして頻繁に部屋を訪れ
一緒に食事したりも出来るので
オレはすぐにOKした
少しづつ距離を詰めていけばいい あせる必要はない
そもそもジュリアスにその気がないんだから
(あ~私服姿可愛すぎ…たまらん…)
ペコリとお辞儀をして部屋を出ていこうとするフェルが
ソファでこめかみを押さえていたアークライトの前に立ったかと思うと
小さな手で長い銀髪をかきあげ額に手を当ててきた
「あたま 痛いですか…?」
キラキラクルクルと色を変える美しい双眸が覗き込んでくる
ちょこんとした鼻 白い肌にピンク色の頬
小さな顔に小さな体
可愛らしい私服から覗く ほっそりとした手足
すぐ目の前にある赤い唇…
気づけば抱きしめ口づけていた
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