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デート (4)

寮に戻ってすぐにフェルはアークライトにお願いをして 部屋の書斎に篭らせてもらった 買ってきた布と糸と アドリアンに借りた裁縫セットを前に 真剣な顔でチクチクとなにかを作っていく 「これはネヴィルの…」 サテンの真っ白な生地に プルシャンブルーの糸でネヴィルのイニシャルを刺繍し その周りの布に持ってきた自分の枕の綿を少しづつ挟みながら プックリとした模様を形どってゆく 袋状に作ったその布に 庭師のお手伝いの時に剪定したバラの花を 乾燥させて作っておいたポプリを入れサシェを作っていた 半月後にあるマルブランシュの日 親愛の情の証としてプレゼントを贈り合うという事を知ったフェル いつも大事にしてくれる人たちに何かしたいと考えた 庭師のアルバイトのおかげでわずかだがお金もあるが パティオ(購買)の商品の販売価格を見て買うのを断念せざるを得なかった それでも感謝してもしきれない友人たちとジュリアスとアークライトに 贈り物を用意したかった この手作りのサシェはシグリッドとの生活の中で教えてもらったもので 完成品は塩や衣服などに交換してもらってた チクチクチク… 手慣れた動きで作っていくが 繊細な模様を作り込んでいるので2時間たってもまだ1つ目が完成していなかった トントン ドアをノックする音がしアークライトが扉を開けずに声をかけてきた 「少し休憩したら?   そろそろ夕飯時だし こっちに用意させたから」 アーク様の書斎から応接室に移動したそこには 寮の食事とは違った豪華な料理が並んでいた 並ぶ食器やカトラリーもピカピカしていて緊張する アーク様が椅子をひいてくれてそこに座る ナプキンをボクの胸にかけてくれて 「こぼさないようにね」と悪戯っぽく微笑む 「閉じこもり姫は書斎で何時間も一体何をしてるのかな?」 向かいの席について優雅な仕草でスープを飲むアーク様が問いかける 今日買ったものを知っているアーク様には察しがついてるだろうにと スプーンを口にくわえたままのフェルの頬が赤く染まる 「ひ…ひみつです」 食事をしながらも昼間見た ジュリアス様と美しいお姫様のことが頭に浮かぶ とてもお似合いで物語の挿絵のような二人だった あの後 街でカフェに入っても公園を散歩しても 考えるのはジュリアス様のことばかりだった

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