61 / 141

デート (3)

古い街並みのを走る車は大きな広場前に到着した アーク様に手を引かれ石畳の道を進む 良い匂いのする食堂 色鮮やかなお菓子が並ぶ店 駆けてゆく子どもたち 着飾った紳士淑女 見るもの全てが目新しくて目が回りそうで アーク様とつなぐ手にギュッと力が入る そんなボクを安心させるようにエスコートしてくれるアーク様は 今日も優雅で見惚れてしまう 古びた店の木戸を開け入るように促される その小さな店の中には壁一面に布やボタンが飾られ その布たちに埋もれるように真ん中に老婆が座っていた 「いらっしゃいませ おやまぁ可愛らしい子が来たもんだ」 入ってきたフェルに気安く声をかけるがすぐに後に続いてきた アークライトと執事たちに気づき頭を下げる 「すごい…こんなにいっぱいの布 キレイ…」 そう言い店の中をキョロキョロと見回すフェルは さんざん悩んだ上でサテンの真っ白な布を選んだ アークライトが老婆に指示し様々な色の糸を出させると フェルはまたもや悩みながらその中から3つの糸を選んだ ポケットから庭師の手伝いで得た銀貨を取り出し オズオズと老婆に差し出す 「これで…足りますか?」 不安そうなフェル 老婆はその手の中の数枚の銀貨を見つめ フェルの顔を見て何か言いかけたが その後ろに立つアークライトの口の動きを見て 「ああ たりるよ」と言い受け取った おつりとして数枚の銅貨を受け取りポケットに大事そうにしまうフェルが アークライトは可愛くて愛しくてたまらない 薄茶色の紙で包装された布たちを 大事そうに胸に抱えたフェルの手を引き店を出た 「アーク様 お買い物連れてきてくださってありがとうございました」 ペコリとおじぎをするフェルに 「デートはまだまだこれからだよ」とウィンクするアークライト デートという言葉に顔を真っ赤にするフェルが 可愛くて抱きしめたくなるが公衆の面前だしガマンする (寮に戻ったら…押し倒してキスしたい!!) そんなことを考えているアークライトをよそに フェルは街の人だかりの先を見ていた そこは美術館の前広場で、ものすごい数の人が美術館入り口を見ていた 聞こえてくる歓声の中にジュリアスの名が含まれているのに気づく よく見ると入口前で美しい少女の手を取りエスコートするジュリアスがいた (ジュリアス様だ…! ) 美しいドレスの美少女と手をつなぐジュリアスは いつもの無表情とは違い美少女に向けて極上の微笑みを向けていた (あんな顔見たことない…) フェルはアークライトと繋いでいた手に力を込めた (キレイなお姫様と王子様…すごくお似合いだ  彼女なのかしら…デートなのかな…) 美術館の中へ入ってゆくジュリアスと少女の姿が見えなくなる 人々が散り散りに去ってゆくがフェルは動けなかった

ともだちにシェアしよう!