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マルブランシュの日 (1)
***ジュリアス視点***
王子なんてくだらない…
生まれてこの方そんなこと思ったことはなかった
責任とか重圧とかあるけれど
公務にやりがいも感じているし
早く父王や兄の役に立てるようになりたかった
Petit frèreの制度は知っていたが男色など気持ち悪いものに興味はなかった
だけど…
アンジュ に出会ってしまった
守るためにPetit frèreにする
そう言う親友を止めれなかった
『オレが…』
喉まで出かかった言葉を飲み込んでしまった
その後 色々あってオレは諦めてしまったんだ…
あの子が幸せになるならそれでいいと
勉強や生徒会の仕事や公務に没頭した
見ないようにして心に蓋をした
たまに見かけるあの子は友人たちと幸せそうに笑っていた
メガネもはずし 顔もだんだんと出せるようになってきているようだ
アークライトとうまくいってるようで今日はデートだって
公務中 遠目に見たフェルの私服姿にときめいた
アークライトと手を繋いでいた
オレはこんなクソつまらん公務中だっていうのに…
ほんっと 王子なんてくだらない…
*********マルブランシェの日***********
大好きな人に贈り物をするこの日
生徒会室の前には大きな箱が設置され
オレやアークライトへの贈り物であふれていた
直接渡そうとする生徒も多数いて
今日という日は校内を移動するのも難儀する
やっと一般人の入れない寮棟の最上階にたどりつき自分の部屋に入ろうとした時
向かいのアークライトの部屋の扉が開いた
赤い絨毯張りの廊下に佇む天使
恥ずかしそうに俯き両手を後ろに立っているフェルの後ろには銀髪の親友
(ああ… 見せつけるなよ なんなんだよ)イラッとして睨みつける
怯えるような表情をするフェルの肩に両手を置き前に進ませ
「睨むなよ 待ってたんだからさ」と親友が言った
前に出たフェルがオズオズと小さな袋を差し出した
「いつもありがとうございます これ…」
受け取り中を見ると小さなサシェが入っていた
それは良い香りがして見事な美しい刺繍が施されて【 J 】という文字が浮き上がっていた
「……」
今日は大好きな人に贈り物をするマルブランシェの日だ
様々な豪華な贈り物で溢れかえりうんざりするほどだった
だが…
深い意味はないのだろう
だが…
(……嬉しい)
顔が赤くなるのがバレるのが嫌で
叫ぶように礼だけ言うとすぐに自分の部屋に入った
多分 沢山の人に作ったのであろう
自分が特別なんじゃないのはわかっている
アークライトのPetit frèreだ
だが…
これだけはオレのものだ
こんな嬉しい贈り物は生まれてはじめてだ
ギュッと両手の中に握りしめると
いつかのフェルの髪の香りがする気がした…
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