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マルブランシユの日 (2)

マルブランシュの日 毎年この日 国中に咲き誇ったマルブランシュの花がたった1日で散る その様子を仲良しの友みんなと眺める 雪のようにフワフワと降り注ぐ花びらを手に受け止めながらフェルが微笑む 「キレイ…夢みたい…」 始めて見るこの光景にフェルが空を仰ぎ立ち尽くす その様子を見る仲間たちは、そんなフェルに見とれる ふいに巻き起こった旋風が花びらを舞い上げフェルの周りを舞うのを見て 「妖精みたいだ」 誰ともなく呟いた 木々の間を歩きフェルが進んだ先には いつもフェルが抱きつき『だいじょうぶだよ』と話しかけていた ひときわ大きなマルブランシュの老木があった この木が花をつけなくなって久しい 老木ゆえにもう花をつけることはないと言われている 今年も花をつけることはなかったこの木を労るようにフェルは撫で続けた 「「「「「すっげー!これフェルが作ったの!?」」」」」」 遊戯室の一角で仲良し8人組でプレゼント交換をしていた それぞれのイニシャルを刺繍しポプリを入れたサシェしか用意できなかったけど 友人たちはスゴク喜んでくれた 「大事にするな!」 「手作りなんてスゴイ嬉しい」 「いい匂いがする」 「オレ鞄につけようっと」 みんながボクにくれたものは高価なお菓子や私服や辞書などで こんな手作り品のサシェ1つしか贈れない自分が悲しくなる 気を使って喜んでるふりをしてるだけかもしれないけど… これが今ボクにできる精一杯だった (来年はもっと良いものが遅れるようにアルバイトがんばる!) ************************ ジュリアス様も 受け取ってくれたけど… (やっぱり こんな粗末なもの差し上げるんじゃなかったな…) 今頃は捨てられているかもしれないけれど 一時でも自分の作ったものを手にしてくれた お礼も言ってくれた それだけで心が温かくなった… ―――大好きな人――― 好きなんて言えない… 言えないけど… ずっと好きでいることを許してください ************************ 「来週から夏季休暇だけどフェルはネヴィルん家行くんだろ?」 「 うん!! 」 「俺らも初等部の頃 行ったよなネヴィルのクローンのような弟妹ウケタ~w」 「だーれがクローン一家だ!」 ポカンとフランツの頭をはたくネヴィル ―――楽しい ―――幸せ こんなに幸せでいいのかな この学院を卒業したらボクはどこに行けば良いのだろう? いつまでここにいていいのかな? 幸せな時間はいつも突然終わりを迎える ジェイの時も… シグの時も… お別れも言えずに突然終わってしまう 不安なことはたくさんあるけれど 今のこの幸せを噛み締めて先のことは見ないようにしよう 「みんな ボク 今日も幸せだよ ありがとう」 涙ぐみながらそう告げる天使を 皆 抱きしめずにはいられなかった

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