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夏季休暇 (1)
小さめのとうもろこしが
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その全部がボクを取り囲み珍しそうに見ている
「ほらー おまえらちゃんと挨拶しろ!」
見慣れたとうもろこし頭の親友が
ペンペンと全部のとうもろこし頭をはたいていく
「こんちゃー」
「…ふぁぁ…」
「…こ…にちゃ」
「らっしゃい」
「ちゃー」
「あぅ…」
大きい方から挨拶してくれた
みんなネヴィルそっくりでとうもろこし色の髪をしてそばかすいっぱいの
よく日に焼けた可愛らしい弟妹たち
ボクは夏季休暇でネヴィルの実家に連れてきてもらっていた
ここは騎士学院から車で2時間ほどかかる農村で
このあたりの農園全てを切り盛りするやりてのネヴィルの父様が建てた2階建ての大きな
だけど温かみのあふれるおうちのリビングだ
ネヴィルは長男で 次男 長女 三男 次女 四男 五男 と続く
「こんにちわ ボクは学院でネヴィルと同室のフェルです
いつも仲良くしてもらってます お招きいただきありがとうございます
夏季休暇の間よろしくおねがいします」
昨日アーク様と練習した挨拶を言い切りほっとする
(恥ずかしくてほっぺが赤くなっちゃう…)
今日のフェルの装いはマルブランシュの日にアーク様から贈られた
涼し気なベビーブルーの半袖シャツに白いネクタイをし
千鳥柄の半ズボンに紺色のハイソックスに革靴という
小公子のようないでたちだった
マジマジと見つめていた六人の弟妹は
「しゃべったー!」
「人間!?人間だ?」
「なんでお目々キラキラしてるの?!」
「男の子なの?ウッソ」
「ちれー…」
大騒ぎである
「賢いね 挨拶もちゃんと出来て わんぱくネヴィも見習ってほしいわ~」
そういう同じくとうもろこし色の長い髪をした女性がネヴィルの母様で
八人目の赤ちゃんがお腹にいるらしく体が重そうにソファによっこらっしょと座った
「うるせーよ オレだってちゃんと挨拶くらいできるし」
口をとんがらかして不平を言うネヴィルは
いつもより子供っぽく見えた
フェルが泊まりに来ると言うので
ネヴィルは自室ではなくゲストルームにフェルと一緒に寝起きすることにした
その部屋の窓からは一面の小麦畑が広がり
ネヴィルの髪が海原になったかのような光景だった
「窓際のベッド使っていいよ オレこっちー」
そういいながらベッドにダイブするネヴィル
三週間ほどある夏期休暇の全てをここでお世話になる
長すぎて申し訳ないと断るが
七人も八人も大差ないと太陽のようにネヴィルそっくりのネヴィ母が笑った
食事のときは戦場のようで
一番小さい2歳のジェイミーは手づかみで食べ顔はソースでベタベタだ
「早く食べないとなくなるぞっ!」
フェルより4歳も年下なのに背丈が変わらない三男のウォーレンが偉そうに言う
女の子のノーマとエイダは少食なのかあまり食が進んでなさそうだが
ネヴィルによると緊張してるからだとか
(知らない子が来たら緊張もするよね…申し訳ないな
早く仲良くなれるようにがんばろう)
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