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夏季休暇 (2)
「フェーウー!だっこー」
フェルって言いにくい2歳の末っ子ジェレミーが抱きついてくる
こんな小さいのに 他の兄弟について同じ遊びをしようとする
ネヴィ父が作った木からたらしたロープに掴まって
体をより遠くに着地する遊びに参加する気満々だ
だっこしてあげてロープをつかませ
ピョーンと飛んだかのように着地させてあげるとキャッキャと喜ぶ
(かわいいなぁ)
「次ボク!ボクもやってー」
5歳のシリルもおねだりする
「お前ら兄ちゃんがやってやるから、いい加減フェルから離れろ!」
「やだー」
「やらー」
幼い弟たちの庭遊びが終わったかと思うと
妹たちに連行された
「きれーな金髪でウットリしちゃう…」
10歳のノーマと7歳のエイダに
鏡の前に座らされ櫛で髪をとかされ三編みにされ
彼女たちのメイク道具なのか?顔に色々塗りたくられる
そのあとは着せかえ遊びだ
人形はボクで洋服は3歳年下なのに体格の変わらないノーマのだ
足首までもあるカボチャのようなスカート下履きと
若草色の花柄ワンピースは胸の上で切り替えがあるふんわりしたもの
「「かわいいぃ~」」
「どう見ても女子よね」
「うん我らより女子よ くやしいわ~」
キャイキャイ言いながら遊ばれる
「あーフェルに生まれたかったなー」ノーマがため息交じりに言う
「ボクは…ノーマに生まれたかったな」
みんなお揃いの髪とそばかすで
毎日一緒に暮らせるノーマたちが心底羨ましかったからそう言ったのだが
どうやら怒らせてしまったようだ
「そんなわけないじゃん!フェルのばかっ!!きらいー」
そんなことがあっても夕飯時にはケロッとして普通に話しかけてきてくれる
眠る時もベッドが2つしかないゲストルームに
6人の弟妹たちがおしかけベッドを占領する
「今日はあたしなのー!」
「お前昨日もここで寝ただろ!」
「オレぜってーここで寝るし」
「フェウとねりゅー」
収集がつかず
いつからかリビングに布団を持ち寄って全員で寝るようになっていた
みんなで水遊び
みんなでかけっこ
みんなでかくれんぼ
みんなでボール遊び
みんなで虫取り
みんなでバーベキュー
みんなで星空観察
楽しい毎日
こんなに幸せでいいのかしら
ネヴィルと同じそばかすだけど、髪はなくつるつるで黒いヒゲモジャのネヴィ父
お仕事の休みの今日
車で遠くの湖にキャンプに連れて来てくれた
いいな こんな家に生まれたかったな
家族ってママしかいなかったけど
こんなふうに毎日過ごせたらどんなにか幸せだったろう
膝を抱え座り、湖に沈みゆく夕日を見ながらそう思った
隣に座るネヴィルが羨ましくて仕方ない
「いっぱいの弟妹いいなぁ…」
「うるせーだけだぞ?オレはもーこれ以上いらねー」
湖のほとりのガーデン椅子に腰掛け、飲み物を夫から受け取るネヴィ母の方を見て
あきれるように言うネヴィル
「ほんっと…何人産めば気が済むんだか あの夫婦は」
ブツクサと不満げだ
「ボクも欲しかったな…」
遠くを見るようにつぶやくフェル
自分にはあのカーティス がいるが
思い出といえばあの思い出したくもない数日の事しかない
湖にキラキラと夕陽が反射している
ネヴィルの強さ 優しさが育まれたこの世界に
自分が今 存在していて少しでも仲間に入れてもらえている
幸せすぎて涙が出そうになる
「ネヴィル… ありがとね」
膝に頭を乗せたまま顔だけネヴィルのほうに向け言った
「なにがだよ オレこそフェルと過ごせてありがとうだしっ!」
同じように膝を抱えていたネヴィルが
夕陽のせいか赤く染まった頬で軽口に言った
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