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Petit frèreの相手は?【4】

生徒会室の応接セットに向かい合わせに座ったジュリアスとフェル 「どうしてブローチをつけない?」 美しい顔の眉間に深い縦じわを刻みながらジュリアスはフェルを責める 「早々にオレのPetit frèreだと表明すれば  あのような騒ぎにはならないのにどうしてだ?」 執事の方が入れたブラックコーヒーを飲みながら言うジュリアス様は今日もかっこよくて 言われる言葉が耳を素通りしてただただ見惚れてしまう 「フェル…?」 ハッとして慌ててボクもミルクたっぷりのカフェオレに砂糖を3つも入れたのに口をつける 「…えっと公表は…しないほうがいいかなって…」 「なぜだ?」 ゴトンッ その時 ジュリアス様の後ろに控えていた執事の人が持っていたトレーを取り落した 「失礼しました」 そう言う執事の人は年の頃は30歳くらいの黒髪の短髪に眼鏡をかけた大人の男性で 名を テオフィル = プーランク という あれは…ジュリアス様と想いを確認しあった数日後――― 降誕のファザードでしたようなキスはしてもらえず ただジュリアス様のお部屋でおしゃべりをした日 ジュリアス様はヴィリアーズ王家の紋章のブローチをボクに渡し 「改めてオレのPetit frèreになってほしい」 って言ってくれて 天にも昇る気持ちでシャツの襟にブローチをつけてもらったんだ ドキドキしながらお互いにぎこちないが楽しいおしゃべりが終わった時 自分の部屋へと戻るボクを安全に送り届けるようにと ジュリアス様がこの人に言ったんだ 同じ寮の5階から3階に下りるだけなので危険なことなどないと断るのに ジュリアス様がどうしてもと言うので送ってもらうことにした 部屋を出て5階から階段を降り4階の執事&使用人専用階に差し掛かった時 テオフィルさんはボクの二の腕を掴み近くの部屋に連れ込んだ この部屋は掃除用具などが収納されている小部屋でスゴク狭かった 突然の行動に驚きテオフィルさんを見つめると ボクのシャツの襟のブローチを乱暴にはずした 「下賤の者がジュリアス様のPetit frèreなどと厚かましいにもほどがある」 と憎しみを漲らせた蔑んだ瞳で見下ろしてきた その恐ろしい瞳と投げつけられた言葉に体が硬直する 「しかもあの小憎らしいアークライトのお下がりなどと許しがたいにも程がある」 王族であるアーク様に対する物言いとは思えない汚い言葉 「ちょっとくらい見てくれが良いからと次々に獲物を変える淫婦め  お前は知らないだろうから教えておいてやる  ジュリアス様は4人いる王子たちの中でも、一際優れていて優秀であられる  将来はこの国を支える大臣か、隣国の婿養子に入られ国王にもなろうかというお方だ」 ウットリと中空を見つめ歌うように言葉を続ける 「そして来年からは海外留学でこの学院を離れられる」 え… (ジュリアス様がいなくなってしまう……?) 驚きの発言にボクはテオフィルさんを見つめる 「だからPetit frèreなどと言っても  あと7ヶ月ほどのお遊びだ  わかったら 己の身をわきまえておとなしくPetit frèreなどと公表などせず  影でジュリアス様のオモチャとしてせいぜいお楽しみさせてあげるがいい」 そういいボクの胸ポケットにブローチを押し込み 腕を掴み廊下に連れ出し 歩くこともおぼつかないボクを3階の部屋まで送るとスタスタと去っていったんだ…

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