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Petit frèreの相手は?【3】

ある日のアークライトの部屋の中 フェルの座る大きなソファのローテーブルを挟んだ向こう側で 唇を尖らせそっぽを向いているのは学院の美少女ことフロラン・シャンプルーだ 「ほら 言うことがあるでしょ」 アーク様がそう促すと 「ボクがアーク様のPetit frèreになるからお前が持ってるブローチを渡せ!」 ソファにふんぞり返り、尊大な態度で手を差し出してきた ボクがビックリしていると アーク様がフロランの頭を小突きながらちゃんと言いなさいと叱る 仕方ないという風情で顔を歪ませたフロランが 「お…お前が悪いんだからな!最初にお前がボクの…ボクの大事な独唱を邪魔したから!」 悪口を面と向かって言われたり足を引っ掛けて転ばされたりと あれ以来フロランには何かと嫌がらせを受けていたけれど 嫌われるようなことをしたボクも悪かった 「だから意地悪した…けど…」 フンっと腕組をしたまま 「…悪かったな!」 そっぽを向いてそう言った 「ごめんね これがこの子の精一杯の謝罪なんだ」 そういいながらもフロランの髪をクシャリとするアーク様の眼は優しさに満ちていた フロランがアーク様のPetit frèreになるからボクはジュリアス様のPetit frèreになればいいと そう言うアーク様に ボクの胸はちょっぴりチクンとした いつも優しかったアーク様の1番にフロランがなるんだと思うと… 我儘すぎるとは思うけれど寂しい気持ちが沸き起こった ボクは制服のシャツの襟元につけていたアーク様の紋章をはずしフロランへと渡すと 受け取ったフロランの顔が花のように綻んだ 美少女と形容されるほど可愛らしいフロランの顔だが 普段はツンツンしていて愛想がない こんなふうに笑った顔は初めてみた 嬉しそうに自分の襟元に紋章を模ったブローチをつけたフロランの睫毛が少し濡れているように見えた その日の学院のニュースは 【アークライトが天使から美少女に乗り換えた】 そのことで大騒ぎだった みんなのアイドル フロランがアークライトのPetit frèreになってしまったショックに 卒倒する者が相次ぎ医務室のベッドは満員になった 捨てられた形になったフェルの後釜に座ろうと群がる狼どもを蹴散らすのに7人の友たちは必死だ 「ひーなんとかしてくれー」 「やめろって フェルにさわんなっ!」 「ちょっとでいいから!手紙!読んでくれ」 「好きだー!」 目が血走った上級生や同級生が行く先々で待ち受ける こんなことになっているのも フェルがジュリアスのPetit frèreになることを拒んでいるせいだった 「騒がしい!―――静まれ何事だ!!」 寮棟入り口の吹き抜け階段の上から モミクチャにされるフェルたちの頭上に 凛とした声が響き渡った 寮監でもある生徒会長のジュリアス王子の出現にその場に居た者全てが固まる 驚き見上げる人々をよそに黒髪の王子は 騒ぎの根源であるフェルを生徒会室へと連れ去っていった

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