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Petit frèreの相手は?【2】

次の日の朝、アークライトの部屋に殴り込んだオレは 広い部屋の豪華なソファに座り昨日のフェルの様子を伝え 何をしたのかと問い詰めた キスマークを見たので何をしたのかは想像ついたが もしも無理やりだったとしたらただじゃおかないと 銀髪長身の美しい人を睨みつける フゥと息を吐き薄い笑みを浮かべたその人は 「そうだね 昨夜のことは私も気になってるから聞きに行こうか」と言った (聞きに行く…?) オレは部屋の外に促され、向かいの部屋に入るアークライトの後に続く そこにはオレの憧れの黒髪の第3王子ジュリアス様が コーヒー片手にソファでくつろいでいた 間近に見るジュリアス様は果てしなくかっこよくて鼻血が出そうになる 向かいの一人がけ用のソファに座るように言われる アークライトは横の飾り棚によりかかりながらジュリアス様に視線を向ける (どうしてオレは今ここにいるんだろう  アークライトに昨夜フェルに何をしたのかと問い詰めに来たはずなのに) ニヤニヤするアークライトが 「昨夜の大聖堂(カテドラル) からの流星はさぞかし美しかったんだろうな」 というとジュリアス様の顔が真っ赤に染まった (な…に…を言ってるんだ) (昨日一緒に流星を見たのはお前だろ?) と不審な目を向けると 「気づかなかったか?フェルが好きなのは私じゃなくジュリアスだってことに」 「……  …………  ………………」 「えええええええええええええええええええええええええええ!!??!?!?!?」 中等部総会の時、壇上にいる役員の方を見つめウットリと頬を赤らめているフェル 石畳の道を歩くアークライトとジュリアス様を盗み見て、幸せそうな顔をするフェル 校舎の中で何かを探すかのように目線をさまよわせるフェルの… 好きなのがジュリアス様だって………? 知らない知らない知らない!知っているはずがない ブンブンと頭を振りクラクラしてくるオレにかまわず言葉を続ける 「んで昨夜 お前はあの子に無体なことをしてないだろうな?って  彼は怒鳴り込んできたってわけ」 悪魔のようにそんなセリフを言う銀髪にオレは目を白黒させた (オレの憧れのジュリアス様が…?    フェルを…?      フェルに昨夜あのキスマークを?) 「っぐ……していない…」 真っ赤な顔のままコーヒーを煽るように飲む挙動が不審だ 「…キスマーク……」 オレがそう言うとゴホゴホッとむせた 口元を拭いながらキッとオレに向き直り真剣な眼差しで昨夜のことを話してくれた フェルに許しを請い 想いを告げそれが叶ったこと 抱きしめキスをして…不埒にも押さえが効かなくなりフェルの衣服をはだけ… 聞いてるこっちが恥ずかしくなるような内容を 真っ赤な顔をして話すジュリアス様と それを意地の悪いにやにや顔で見るアークライト そして背中の傷を見て 自分も過去にフェルに残酷な行為をした義兄と同じように欲望のままに 怖がるフェルに無理を強いているのではないかと気づき そういう行為をしようとした自分を戒めたが 押さえが効かなくなりそうで早々に大聖堂(カテドラル)を後にしたのだそうだ フェルを本気で愛していることを切々と訴えてくるその瞳は真っすぐで信用できると感じたが あまりの話の展開に頭が追いついていかない アークライトのPetit frèreなのに…? いつから? どうしてこうなった? それでもフェルが幸せならそれでいいんだが――― 「Petit frèreは…どうなるんですか?」 そう尋ねるとアークライトは 「ああ 解消かな 私も他に好きな子がいるし、形ばかりのPetit frèreは終わりにするよ  もうオレ以外に守るべき男がいることだしね」 そう言いウィンクをしながらジュリアス様へと視線を移した 力強く頷いたジュリアス様がオレのほうを見る 納得したオレは 「昨夜、部屋に戻ってきたフェルは自分の背中の傷が汚いと泣いていました」 驚くジュリアス様 そんな事を彼が言うはずがない  誤解なんだろう だけど… 最後にこれだけは言っておこうと意を決して言った 「今後フェルを泣かせるやつは誰であろうとオレが許さないんで覚えておいてください」

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