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口止め【3】

「ネヴィルー!!!」 ネヴィルに抱きつき涙を流すフェル 「ボクやだ…寂しいよネヴィルと離れるなんてやだッ!」 永遠の別れのような二人をやれやれと見つめるのはアークライトだ アークライトの Petit frèreでなくなって以来、フェルを狙う生徒たちが 毎日のように部屋を突撃してきては 7人の友人たちに追い払われるという事態が続いていた ジュリアスの Petit frèreになればおさまるだろうに フェルが固く拒否しているので事態がおさまらないのだ ―――寮の風紀の乱れ――― それを理由にフェルの部屋替えは決行された 5階の王族専用階に続く 4階の執事&使用人専用階の1室がフェルの部屋として用意された ここは3階からの階段にある検問を受けないと上がれないシステムになっていて 一般生徒は立ち入ることができない 「ほら…すぐ上の階なんだし、授業でも毎日会えるでしょ」 「やだっ!やだー!!ネヴィルと離れたくないっ!」 ネヴィルの首に抱きつき、頭を胸にグリグリするフェルを引き剥がす 学院に入学して半年、ずっと寝食を共にしてきたネヴィル 接触恐怖症だったフェルをいつも守ってくれたネヴィル デレックに襲われた時、血を流しながら守ってくれたネヴィル 悪夢にうなされた毎日も、嫌な顔一つせず心配して頭をなで抱きしめてくれたネヴィル 実家に連れて行ってくれて家族の仲間に入れてくれたネヴィル そのネヴィルと同じ建物とはいえ離れるなんて悲しくて涙が止まらない 「ボク メガネして髪でまた顔かくすから!  目立たないようにするから ネヴィルと離さないで?」 お祈りのように両手を握りしめアークライトに訴えるフェルの頭を パッコーンと小気味よい音を鳴らしてフロランが殴った 「い…たぃ…」 「いい加減にしろ!このままフェルが3階にいると風紀が乱れるんだよ!」 頭を押さえるフェルにビシッと指差しした美少女が言い切る 「だって…」 天使の瞳に涙がまた盛り上がる 「ボクも同じ理由で中等部入学以来4階なんだから!  文句言うな! 学院の措置を有り難いと思えよ全く!!」 今日もプンプン怒っている フロランも今回のフェルと同様の理由で、入学以来4階住まいなのだっだ 「ほら行くぞ!」 フェルの首根っこを掴んで引きずるように部屋を出る 「ネヴィルー!ネヴィルーーー!!」 両手を伸ばしネヴィルに助けを求めるようにするフェルだが 結局引きずられて去っていった ******ネヴィル視点******* はぁ~~~ ネヴィルはベッドに腰を下ろした 『やっと来たね!同室になったネヴィル・ルースだよろしく!』 あれから半年 はじめての二人部屋でどんなやつか心配だったけど(初等部は4人部屋) 同室になったフェルは純粋で、健気で、頑張り屋で、汚れを知らない天使だった 人として大好きなのは当然だが 恋の対象としても好きになりかけた (いや…好きだったな… )    フッと口の端で笑い自嘲する でもフェルには両想いのジュリアス様がいて オレの出番なんて一生回ってこないのは明白で なのに同室ということでムラムラ来ることがありすぎて 鼻血が出すぎて体が保たないと生徒会に願い出たのはオレだ――― 誰もいなくなった隣のベッドを見る 「しばらくは寂しいだろうがスグ慣れるさ」 その言葉はフェルに向けてなのか自分に向けてなのか ネヴィルにもわからなかった

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