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誘拐【10】コピーの昔語り 2
ご飯を食べすぎると大きく なるからと、量は少なかったけど毎日見たこともないような美味しいご飯が食べれた。
ご主人さまはボクにいろんな事を教えてくれて、街にも連れて行ってくれるようになった。
陽に焼けるといけないと日焼け止めを塗ってくださる。地下室で暮らし始めてから、肌が白くなっていくと、とても喜んでくださってボクも嬉しかった。
前にいたところのような労働はさせられなかった。
夜になると暗闇が怖いボクを抱きしめ一緒に寝るために地下に来てくれてアイシテルと言ってくれた。
怖い夢にうなされ泣くたびに、バカだなぁと言いながらも『もう怖い人はここには来ないし、オレが守ってやるから
怖い夢なんてもう見るな』って怒ったような顔で言うんだ。
コピーって呼ばれるたびに、ボクは前のボクじゃなくご主人さまだけのボクになったようで嬉しかった。
ご主人さまの役にたちたい、ずっと側にいたい、捨てられたくない。
アイシテル…ボクもご主人様をアイシテル―――
ある日、街で天使のようにキレイな子を見た。
ボクと変わらぬ背丈で同じ金髪なのに、その子はキラキラと輝く瞳と美しい顔をしていて、ご主人様も目を離せないように見つめていた。
「見つけた…」 そういいご主人様はわらった。
ボクはあの子のコピーだったんだ…それも出来の悪いコピー
ご主人様がアイシテルと言ってたのは、ボクじゃなくあの天使だったんだ。
背中に鞭が与えられる。完璧な複製品になるためだ。イタイ…イタィ…でも完璧になったら捨てられない?
オリジナルと同じになりたい。痛くてもガマンできる。
ご主人様をアイシテルから―――
あれからご主人様は何度も街に天使を探しに行った。夜アイシテくれる時、ボクに決まったとおりのセリフを言わせるようになった。その時だけはご主人様ではなく『にぃさま』と呼ぶ。自分のことをフェルと言いオリジナルになりきる。
そうすればアイシテもらえて捨てられない…
はずだった……
のに
*******昔語り終わり**********
アイシテクレルはずだった―――
そう言って、コピーは立ち上がると部屋を出ていった。
コピーのアイシテルは愛してると同義語なんだろうか?
ただ保護してくれた人間に捨てられないように行動してるだけじゃないのか?
カーティスから離れて普通の生活をすればあんな考え方にはならないはずだ。
彼をボクのコピーとしか思っていないにぃさま なんかをアイシテルはずなんてないんだ。
それにしても…
コピーはボクと背の大きさが変わらないのににぃさま のを入れられて痛くないのかな?
ジュリアスさまは、もっと大きくならないと傷つけるからできないって言ってたのに、傷はつかなかったのかな…?
聞いておけば良かった。
数時間後、地下室のドアが開きカーティスが戻ってきた。
部屋を見回す 怪訝な顔をする。お風呂も覗き、コピーがいないことに気づいてしまった。ボクを睨みつけるとそのまま階段を駆け上がっていった。
コピーを探して連れ戻すつもりだろうか?もう逃げて随分たつし大丈夫だとは思うけど…。
助けを呼んでこなくてもいいから安全な場所で…今度はシグみたいなちゃんとした人に保護してもらって普通に生きてほしいな………
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