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第6話

 目がさめると、窓の外は白み始めていた。隣には、清水が健やかに寝息を立てている。 「…………」  彼を起こさないように、ベッドから出ると自分に割り振られた部屋へと帰る。クローゼットから一着、適当に出すと着替えてから大きめのバックに適当に衣服とサイフを入れた。  αとβでは、どう考えても幸せにはなれない。いつ清水に運命の番が現れるかもわからないのに、捨てられることに怯えながら過ごすなど耐えきれなかった。 (いや、そもそも、彼が俺を好きだとも限らない)  現れた番の隣で幸せそうに笑う清水を想像するだけで、張り裂けそうなほど胸が痛んだ。 『αの君でもβの君でも関係ない、君だから必要なんだ』  初めて明かりがないことに安心したあの日に清水が言ってくれた言葉を思い出す。 (βとΩすらムリだったことが、できるはずもない)  俺は、カバンを持つと玄関のドアノブに手をかけた。暗い部屋を見渡す。  もう一度、できれば最後に清水の声が聞きたいと思った。それでも、俺は暗い部屋から一歩ふみだし明るい場所へと歩いた。 もう二度と彼と会うことはないだろう。

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