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クリスマス編 8 それは欲望のキス
いつもサンタさんには玩具をお願いしてた。
今年はね。
ちょっとね。
ちょっと、違うものが欲しいんだ。
玩具じゃなくて、もっとすごいもの。きっとサンタクロースにしか叶えられそうもない。僕のお願いは。
僕の欲しいものは――。
直江先生が僕の先生になってくれますように。
「……」
そんなお願いを子どもの頃のしたことがある。意味なんてわかってない。恋心なんて知りもしない、とても幼い子どもの無邪気なお願い。
「……せんせ……おはよ」
きっと子どもの俺は、先生が自分のとこの担任になってくれたらいいのに、とかそんなふうに思っていたんだろう。実際、この人が俺の担任になったことは一度もないから。高校生になって三回あったチャンスもスルーだった。初等科の頃から先生のことばかり追いかけていて、職員室でも常連だった俺はあえてそこを避けるように仕向けられてたのかもしれない。そこに先生のお父さんの何らかの意図があったのかなんて知らないけれど。
「あと、メリークリスマス」
でも、この幼く無邪気な願いの根底には、恋心があった。だから、このお願いはとてもしたたかで貪欲で、恋のはしたなさがすごいあると思った。
「メリークリスマス」
「んもぉ……狸寝入りだ」
「あぁ、寝込みでも襲おうかと思ったんだ」
「あっ……ン」
僕の先生になってくれますように――なんてさ。
「……硬くしてるのか?」
「あっン……だって、先生のっ、寝顔っ、セクシーなんだ、もんっ」
でも、さすがサンタクロースだ。
「ン、センセっ」
この人はちゃんと、僕の先生になった、んだから。
「あ、ぁっ……ン、こっちも、可愛がって」
「……」
「あ、あぁぁっン、まだ、柔らかい、でしょ?」
朝方まで貴方にしゃぶりついたはしたない孔はまだ柔く濡れて、奥に貴方の精液を沁み込ませたまま。
その孔を浅く悪戯に貴方の指がいじって、弄ぶ。くぷくぷと指をちょっとだけしゃぶらせて、すぐに離れて、また孔の襞を撫でて可愛がる。
意地悪で、やらしくて、ゾクゾクするほどカッコいい、俺の先生。
脚を腰に巻きつかせながらしがみつくと、お尻を割り開くように両手で包みながら、先生が寝そべった。しがみ付いていた俺はそのまま、先生の胸板の上に寝そべるように上に重なって。大きな手にお尻を割り開かれる。孔が丸見えで、興奮する。
「先生……」
起き上がると、まるで悪い生徒が先生を誘惑して押し倒してしまったみたい。
「ぁ、ン、先生のも、硬い」
「葎」
尻の狭間に太いペニスを挟んで、上下に腰をくねらせる。
「どこで、そんなやらしい腰振りを覚えたんだ?」
「先生に、教わったの」
俺だけの先生に教わった。
「ぁ、あっ」
昨日は拘束されていた手を添わせて、そそり立った先生のペニスをほぐさないまま孔の中に。
「あぁぁぁっ……ン、ぁッン、すごい、ぁ、ぁ、あっ、奥、来ちゃうっ」
ここでする、やらしくて気持ちイイセックスを教えてもらった。
「あ、ぁッ、ん、乳首、いじって、先生の指で摘んでっ、あっ ひゃぁぁっンっ」
愛しい男に教えてもらった。
「あぁあっ乳首、ダメ、も、乳首、イっちゃう」
セックスを。
「あ、先生っ、イくっ、先生ッ、イっちゃうっ」
夢中でお尻を振りたくって、腰をくねらせて、先生のお腹に自分のピンク色をしたペニスを擦りつけていたら、ぐるりと反転して、組み敷かれた。
「葎……」
「んっ……先生」
自分でするも好き。先生にはしたないところを見せながら、先生に教えてもらった快楽に溺れて、教わった場所をたくさん擦ってイくのも、すごく好き。
「あンっ……これ、好き」
でも、これが一番好き。
「あ、あ、あっ、あっ」
大きな背中にしがみ付いて、貴方が突き上げるままに揺さぶられるの。
「あぁぁぁッン」
「葎」
「先生」
子どもの頃、先生が大人なんだってサンタクロースのあの袋にも入らないかもと思ったことがあった。貴方の愛用していた椅子に――。
「大昔、お前が同級生と喧嘩をして膝を擦りむいたって、来たことがあった」
「……」
「血が出てないのに、絆創膏を貼ってくれってせがむお前を俺の椅子に座らせて」
貴方の愛用の椅子はすごく大きくて。
「あぁ、なんて小さいんだって、思い知った」
あぁ、大人の男の人なんだって、実感した。
「抱きたいとは、さすがに思ってなかったが」
あの時から、俺の願いはずっと同じ。
「でも、教室にいるお前を数学準備室から眺めることに飽きないくらいには、想ってた」
僕の先生、になってくれますように。
「昔っから、大事だった」
「……」
「もう、俺は、いい大人、なんだけどな……」
「? っ、ぁっ! あ、あぁぁっ、ン、んっ、先生っ」
深く、貫かれた。もう昨日いっぱいしてもらった奥は悦ぶばかりで。
「誰かに泣かされることに腹は立つし」
「!」
中だけでたくさん気持ち良くなれるように、今年のクリスマスの夜にたっぷり教わった身体は、甘く啼くばかりで。
自分の身体の中でも、抱いてくれる強さにも、先生が見せた独占欲を感じて。
「誰にも、譲りたくないと、クリスマスに願うくらいには――」
「ぁ、ぁ、ぁっ、あ、あぁぁああぁぁぁぁっ!」
先生の小さな独り言は聞き取れなかった。
「これ……」
「お前にやる。持ってないだろ? クリスマスプレゼントだ」
「……」
朝方までしたセックスの名残が残る手首の、一番柔い内側に歯を立てられて、キスをされた。
「腕時計」
手首には貴方の痕がほんのり赤く残ってる。その痕を覆うようにひんやりとした重みが心地いい、腕時計。文字盤のところが夜空色をして、ほんのりと淡いエメラルドグリーンにグラデーションになっていて、とても綺麗。
「葎」
その腕時計の金属のベルトと肌の間に潜り込む先生の指にさえゾクゾクした。
「知ってるか? 手首へのキスの意味って」
「……知らない」
腕時計の感触が貴方の指の感触とごちゃ混ぜになって、貴方の指の感触に昨日のネクタイの肌触りを思い出して。
「教えて、先生……」
たまらなく、朝から、欲情した。
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