14 / 34

12

〇朱華のアパート前(夜)  コンコンと扉をノックする音。朱華、扉を開けずに 朱華「どなたですか?」 辰典「苑巳組、次期頭首苑巳辰――」 朱華「お帰りください」 辰典「ちょっと待て、一瞬顔だけ見せてくれ。いや、俺を見てくれ」 朱華「一体、なんなんですか?」  扉越しに交わされる会話。 辰典「良いから、一瞬だ、一瞬」  そろりと開く扉、朱華は辰典の変貌ぶりに不覚にもドキリとしてしまう。 辰典「今、ちょっとはタイプだと思っただろう?」  扉を手で掴んで開き、朱華の身体を抱き寄せながらも部屋の中に入る辰典。一瞬の出来事だった。 朱華「そんなことは……」  ふっと我に返ってどぎまぎする朱華に辰典はキスをしようと顔を近づける。と、唇が触れそうになる瞬間、奥の部屋から赤ちゃんの泣き声が聞こえてくる。  

ともだちにシェアしよう!