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第1話

 土日と祝日が重なる三連休の初日のことだった。  その朝、一之宮紫月(いちのみやしづき)は夢で起こされた。心地の悪い、非常に嫌な夢だ。幼馴染みであり親友でもある鐘崎遼二(かねさきりょうじ)が出てきた――までは良かったのだが、その内容が少しばかり驚愕だった。  遼二とは高校に進学して間もなくの頃から、親友を越えた濃い関係を結ぶようになっている。元々、異性に興味が持てなくて悩んでいた紫月は、学園行事で行った夏キャンプの際に、ふとしたきっかけから彼とふざけてキスをしてしまった。それを機に思いも寄らぬ火が点いてしまい、今ではしっかりと肉体関係を結ぶ間柄にある。  が――、だからといって、二人の間では互いを恋人だとかいう括りで定義付けているわけでもない。告白はおろか何の約束もしていないし、言うなればセフレのようなものだ。そんな曖昧な関係だが、今までは取り立てて不満に思ったことはないし、不安に感じたこともなかった。  ところが――だ。今しがた見た夢は、そんな遼二との関係を考えさせられるようなきっかけとなり得るものだった。  遼二と深い間柄に嵌まる少し前のことだった。それまでは彼にも、いわゆる『彼女』と呼べる相手がいたこともあった。  容姿端麗で男らしい魅力にあふれた遼二は、性質も気さくで、男女問わず誰からも好かれるような男だ。どちらかといえば愛想のない自身とは違って、彼は女性からもよくモテていた。告白されることも多く、気のいい性質だから断るでもなく、とりあえずは相手の好意を受け入れるタイプの彼は、女たちと付き合うことも割と多かった。  そんな経緯が頭のどこかにあったのだろうか、先程見た夢の中での遼二は、自分の見知らぬ女と情事にふけっていたのだ。  脳裏に浮かぶ映像の中には、女を後方から抱き包む彼がいる。酷く濃密な雰囲気で、はっきりとした欲情にまみれて絡み合う二人の姿に、胸が締め付けられるような思いに陥った。  夢の中の遼二は女に奉仕され、快楽がたまらないというような表情で彼女の髪を撫でている。いわばオーラルセックスというやつだ。しばしの後、逸ったように彼女を抱き締め、ふわふわとした巻き毛の長い髪を掻き分けて『――いいか?』と、色香であふれた低い声を耳元に落とした。もう挿れたいという意味だ。  そんな行為を傍で見ながら、『おい、てめえ――何してやがんだ』懸命にそう叫ぶも、当の二人にはこの声が届かない。喉が焼け付いて()れそうになり、そこで目が覚めた。

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