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出社前に立ち寄った、最寄り駅前の全世界に展開されているコーヒーショップは、既に長蛇の列が出来ていた。 時間は見なくとも余裕があることぐらいわかっているが、いつもの癖でひょろひょろの右手首につけたアナログ腕時計に視線を向ける。 それを見るたびに俺にゴツメの腕時計は似合わないなあ、と思うけれど、営業たるもの、時計ぐらいはしないと、と母親が無理矢理に送ってきたものである。 これが彼女からのプレゼントとかだったら。 堂々と付けるんだけども。 母親ってのが微妙。 『凛ちゃんさん、いい時計してますね~~!あ、プレゼントなんです?すごーい、……え、お母さん??あっ、へーー、なるほど~~(棒)』 で、マザコン決定!! マザコンレッテルを貼られるのがオチである。 これ、経験済みだからね。 身長が180弱あったとて(一応175センチはある筈なので、四捨五入、嘘ではない)、母親似の女顔である見た目と時計は母親からのプレゼント、それから鈴木という社内に何人もいるなんの変哲もない名字であるがために下の名前で呼ばれる他無く。 あだ名で呼ばれることに不満は一切無い。 俺の名前は凛太。 昔から家族は凛くんと呼んでいた。 のに!!! 何故か家族以外からは凛ちゃん呼びという、これはまた可愛い印象を与えるという残念さが相まって、俺の女の子への印象はガラリと変わるのである。

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