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見慣れた店員からグランデサイズのコーヒーを受け取り、徒歩3分のビルへ足早に向かう。 エレベーターを降り、熱々のコーヒー片手に黙々と歩いてオフィス手前の角を曲がると、障害物に軽くぶつかった。 (やっべ、前を見ていなかった) 「ごめ、」 「ハーイ、凛ちゃんっ!調子はどう?」 恐る恐る見上げると、(とは言っても俺は180弱なので、180センチな彼とはそう変わらない…筈なのである)シックなスーツに、黒髪、別に派手な出で立ちではないのに、朝からうるさいくらい見た目がチャラチャラしているウチの部署イチのモテ男が眩しい笑顔を向けてきた。 「チッ」 「あ、舌打ちなんてお行儀悪いよぉ」 同じコーヒーショップのカップを持って、壁にもたれて立つその男は何をやっても様になるのがムカつく。 「ゆーちんに会ったから絶不調になった」 「わーお♡冗談が上手だねっ」 なにが、わーお♡だよ! 調子乗んじゃねえよ! 「ゆーちんfuckin'」 テレビならモザイクが入るポーズで答える。 「やっぱ調子いいんじゃん〜」 大回りをして横を通り抜けた。 この調子の良さと、人懐っこさと、それとなく面影が残るクォーター顔面の強み、人望と信頼と実力を兼ね揃えているという点においてモテないわけが無い。 気に食わない、とは思いつつも、仕事上での戦友みたいなもので、同期であり、仲良くないかと言われたら首を横に振るぐらいはする。 「あ、課長が話あるって」 背中に投げ掛けられたその言葉にわざと不機嫌さを出しつつ振り向いて睨みつけてみせると、彼は肩を竦めてカップに口を付けていた。 「先に言えよ」 「つれないなあ」 ふふ、と含んだ笑いを向けられた。 「なんだよそれ」 彼は口元に右手を当てて、僕にだけ見えるように唇を動かす。 「今日も可愛いよ~~♡ りーんちゃん♡♡」 そう。 そうなのだ。 コイツは男である俺相手にもこういうことを軽く言うような男。 キモいと言えればいいのに!! これがまた、当事者である俺から見たって「あれ、イケメンだ」と思うぐらいなんだから!! 腹立つなーーー!!もう!!!

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