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神妙な面持ちで、両手をつり革に掛けて覗き込まれる。
少しグレーな瞳にライトが入るとキラキラ光っていて、俺はたまにこの瞳に吸い込まれそうになる。
「うちのにゃんこ、見に来ませんか」
「行きません!」
「即答かよー、つめたーい!宅飲みしてくれてもいいのに~~、あ、でも今日はダメ。客先訪問して食事会だったんだった」
勝手にペラペラ話すゆーちんの表情はくるくる変わる。
「あー、大型の新規ってとこ?」
「そうそう、デカイユーザーになりそうだからって、部長同伴」
「ゆーちん、出世早そうだなあ」
こんなチャラチャラしているモテ男だけれど、やるとこはしっかりやっているところは認めていて、良いライバルだと思っている。
「んー、ま、どーだろ、どっちでもいいけど」
「相変わらず昇進にはあんまり興味ねえなあ」
「給料が増えるのは嬉しいけど」
がたん、と揺れる満員電車に揺られて今日もいつもと同じ毎日が始まる。
と、思ったのに。
「え、嘘、マジかよ」
「マジマジ、明日発表らしいんだけどさ」
「うそーーー!!やべーーっ!!」
本日一発目、俺の担当のひとつである、小さな町工場の自己倒産のお知らせを持ってきた同僚に肩を叩かれた。
「死んだ」
「死んだね」
「手形回収できるかな…」
「無理じゃね?」
本日は散々な日になることが確定したのだった。
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