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第5話
温かみも優しさもない瞳。
何を考えているのか全く掴めない瞳。
そんな兄の瞳が血が足らず夢うつつになりだした俺の瞳に映し出される。
一か八か、可能性は一握りあるか、もし失敗すればきっと死が待ち受けているんだろうなと頭の片隅で思いながら兄の顔を自分の顔もとまで誘う。
なにも言わず行為をやめて顔を近づけてきた兄に軽く俺は微笑み、兄の肌白くもしっかりした男の首筋を軽く撫で輪郭を確かめる。
そのまま頭だけを地面から浮かせるのは血の足りてない今は出来るならしたくはないが力を振り絞ってかぶりつくとプッという音と共に、大量の血が口の中に流れでる、きっと鉄のような味なのだろうが舌が麻痺しているのか味や温かみ匂いなんてわからない。ただひたすら無我夢中で己の渇きを潤わすために飲む。
ごくごくと飲んでいると兄にゆっくりと首元を離される、それにより俺自身無理な態勢をしていたうえ結構しんどかったので同時に地面に頭をつけ力を抜く。
今にも閉じそうな瞼をあけて兄の表情を確認すれば一瞬驚きを見せるが、すぐに優しい瞳で俺の頬を愛おしそうに撫でてきた。
一か八かの読みは当たったようだ。
わずかな可能性にかけただけあって今まで何のために血を吸われなきゃいけないんだとただ痛くて痛くて無意味にしか思わなかった分、読みが当たったことへの安堵が漏れ、恐怖でしか無かった兄と一瞬で心でつながったような気がしてポカポカと心地よくなり人が180度変わったように俺は固定されていた片腕の開放もされたのでドキドキしながら今まで兄にやったことの無い両腕で背中に抱きついてすり寄って猫甘えみたいにゴロゴロとしてみた。
その後恥ずかしくなってきて兄が俺にすることを真似をして所々から兄の血を吸う。真似をするといえど兄は殺す勢いで俺の肉をえぐり血を飲むが同じようになんていっても俺は軽く、軽くだ。
そんな俺を見て今までに見たことの無い優しく微笑みを向けながら優しく髪の毛をなでてくれる。その行動に槍が降ってきそうと不謹慎なことを考えながらもだいぶ血を吸ったので『もう満足かな。』と吸っていた個所から口を離し顔を上げると、またまた兄と目が合う。
何故か兄に顔を固定されてゆっくり顔が近づいてきた。そのまま顔をそらすこともできず軽く唇が重なり合う。そのまま何度と唇のふれあいをしていたが何処でスイッチが入ったのか雄の目をした兄が角度を変えながら激しいキスをしだした。
息の仕方が上手くできず呼吸が荒くなってきた俺の耳には、自分の呼吸とちゅっ…というリップ音のはざまに「もう、一生逃がさない。」と兄の口から恐ろしい言葉が聞こえた。
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