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第1話
好きな時に好きな番組を選べる様に、人生も恋も簡単に切り替え出来たら良いのに、いつもそう願う。
中2の身体測定、僕達の学校では血液検査をする。
男女という基本の性別は産まれた時に決まっているのだが、第二次性徴期にもう1つの性別に分かれる。
因みに性別とは、アルファ男性・アルファ女性、ベータ男性・ベータ女性、オメガ男性・オメガ女性の計6種類。
僕の家系はαが多いので当然自分もαだと思っていた。
実際今迄αだと言われていたし、許婚も同様の理由でΩだと決め付けられていた。
僕の名前は北原星流(きたはら せな)。
祖先の中にロシアの血が混じっているからなのか黒髪黒目ではない。
白い肌と金に近い茶髪とグレーの瞳。
周囲と明らかに異なるが、αの家系だから苛められなかった。
許婚の名前は芹生翠葵(せりょう みずき)。
綺麗な黒髪と茶色がかった黒目で、可愛らしい容姿をしている。
幼少期から決められた間柄でずっと一緒に居るからか、僕と翠葵は仲が良い。
互いに性に関して淡白だったしパートナーも決まっている為焦らずゆっくりで良いやと考え、キスもしていない。
なので僕達の関係は許婚と言うより親友に近い。
パートナーは基本ずっと一緒に居る為、僕達は幼稚園からずっと同じクラスだ。
身長体重・視力・聴力等の検査は体育館で行うが、血液検査だけは衛生上保健室で行う。
で、後日全員分の結果が個別に保健室で発表される。
診断結果の日
『どうせ結果は聞かなくても分かってる』
軽い気持ちで向かった。
一人一人身長順に並んで呼ばれるのを待つ。
僕は翠葵より約0.5cm高い為翠葵のスグ後ろ。
「行ってくるね」
笑顔で入った翠葵。
他の人はスグ出て来るのに、何故か10分しても出て来ない。
何かあったんだろうか。不安になってハラハラしていたら漸く開いた扉。
「翠葵?」
翠葵の顔は真っ青だった。
「大丈夫?」
慌てて口を開いたが
「北原君どうぞ」
中から呼ばれた為渋々保健室に足を踏み入れた。
「はぁ?何言ってるんですか?何かの間違いでしょ?」
「いいえ、間違いではありませんよ」
「いやいやいや。よく調べて下さい。誰かの結果とごちゃ混ぜになってませんか?」
「北原君。受け入れ難いでしょうが、全て事実です」
検査の結果、僕はΩだった。
ΩとΩは結婚出来ない。
まぁ異性間だったら子供出来るから可能だが、しても妊娠の確率は極めて低い。
つまり僕は翠葵とはもう結婚出来なくなったんだ。
受け入れたくない結果を突き付けられて、僕はフラフラと保健室を出た。
『翠葵?』
教室に翠葵は居なかった。
翠葵は嫌な事があると決まって中庭の花壇の前に向かう。
お気に入りの場所だ。
移動すると、案の定其処で翠葵は泣いていた。
「どうした?」
基本翠葵は余り泣かない。
「翠葵?」
ゆっくり近付き名前を呼ぶと涙目で振り向かれた。
初めて見る泣き顔。
一体どうしたと言うのだろう。
「ごめん、星流。僕もう星流と一緒に居られなくなった」
突然耳に入った台詞に
「え?」
僕は固まった。
「βだったんだ、僕」
え?
「Ωじゃなかった。だから番にはなれない」
そうか、翠葵も予想と違ったのか。
「星流はαだよね?」
嗚呼、言わなきゃいけない。
でも、言いたくない。
「星流?」
泣きながら聞かれ
「…………………………Ω…だった……」
消え入りそうな声で呟いた。
こうして長年一緒に居た僕達の関係は呆気なく解除された。
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