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第2話

傷心のまま進学した高校。 あの後家族は新たな許婚を選ぼうとしたのだが、僕は断った。 もう二度とあんな想いはしたくない。 ずっと一緒に居られると思っていた相手との関係を解消されるのはもう嫌だ。 第二次性徴期で定まった性別は余程の事がない限り変わらない。 中には強いストレスや何かしらの影響とかで変わる事もあるらしいが、極めて稀なので先程述べた様に基本性別の変化は無きに等しい。 だが万が一を考えると、不安が消えない。 許婚解消後、僕達は親友になった。 小さくて可愛かった翠葵の身長はいつの間にか僕を超え、顔立ちも端正な男前になった。 対して僕は完全に女顔になってしまった。 Ωの呪いか?そうなのか? 非常に哀しい。 Ωにはαやβと違い、周囲を惑わすフェロモンや発情期があるらしい。 そのせいで常に様々な危険と隣り合わせになるらしく、それを阻止する為僕は家族から発情抑制剤を服用する様義務付けられた。 よく分からないが、飲まないと自分が危ないらしいのでΩだと知ってからは定期的に服用している。 そのお陰か、僕は今迄誰にも襲われずに生きてきた。 親友になった翠葵はあれからずっと僕をまるで騎士みたいに守ってくれる様になった。 毎日身体を鍛え、沢山運動をし、あっという間に理想的な細マッチョになった。 どんなに運動しても筋肉が付かない自分からしたら羨ましい限りだ。 高校に入る前は何故だか女子にモテた。 男性らしくない容姿が絵本から出てきた王子様みたいだと毎日賞賛された。 断ってもしつこく付き纏われて困っていると、いつも助けてくれたのは翠葵だった。 いつも側に居てくれて、守ってくれる。 会話も楽しいし、ずっと一緒に居たいと思う。 誰も好きになって欲しくないし、僕以外を見て欲しくない。 男前になった翠葵は人気がある。 だが、いつも告白されても断っている。 僕の側に居たいからだと言っているが、それは一体どういう意味なのだろうか。 聞きたいが、聞くのが怖くてずっと聞けずにいる。 一緒に居るとドキドキするのは何故だろうか。 翠葵が他の人と居るとモヤモヤしてしまうのは何故? 本当は分かっている。 それは恋だって。 僕は翠葵が好きだ。 ずっとパートナーだと信じていたんだ。 傍に居て当たり前の存在だと。 でもそれは叶わない。 好きになっても結ばれないと分かっているから想いを伝えられない。 だから今日も僕は唯の親友の顔をする。

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