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第1話
「……ぅ、ん……」
体がふわふわとしていたと思ったら、雲の上に乗ったようなふかふかの感触に包まれる。
体中が熱い──
頭がぐらぐらとして、体もなんだか怠い……
……それもこれも、全部カズのせいだ。
「……はぁ?」
目を丸くしたカズが、訝しげな表情へと変わる。
「だから、今日は新人歓迎会なんだって……」
「聞いてねぇ!……ていうか、反対だ反対!」
前は、こんなに僕を縛るような奴じゃなかった。
酒は止めろって、言われてたけど……
「……あんな3K以上の仕事に人が入る事自体、珍しいんだよ。
すぐ辞めちゃわないように、社長命令で全員参加って……」
「……嫌だ」
朝食を摂る手を止め、大きく溜め息をつく。
「……飲まないから」
「ホント?」
「ほんとだって……」
「………」
渋い顔をしつつ、歯切れの悪い了承の頷き。
あんなに僕には反対していたのに……
《悪ぃ。さっき懐かしい奴らに会ってさ。これから飲みに行くから、帰り遅くなる》
飲み会中、突然入ったカズからのメッセージ。
顎先に指が触れ、次いで唇が塞がれる。
「……ふ、ぅ……んっ、!」
性急に舌根まで咥内に入り込み、僕の舌に食らいつく。
流れ落ちてくる、生暖かい唾液。
それが口いっぱいに溢れ、端からつう、と滴り落ちる。
「……伊江……」
ゆっくりと熱が離れ、息苦しさから解放される。
「お前、本当に可愛いな……」
髪を撫で梳かれ、ゾクッと体が震える。
携帯を仕舞うと、近寄ってきた先輩が隣に座る。
「伊江、全然飲んでねーじゃねぇか」
綺麗なグラスにビールを注がれ、目の前にスッと出される。
……カズとの約束、守るつもりだったけど……
グイッ
一気に酒を煽る。
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