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第8話
……はぁ、はぁ
「……い……伊江。……スゲェ……吸い付きすぎて……はぁ、俺も……」
……あれ、ナツネくん……?
蕩けたままの双眸で見下ろせば、
そこにいたのは……
「……もう、限界……!」
……せんぱ、い……?
微睡みどころか、酔いが一気に冷め
サッと血の気が引く。
その瞬間、ギュッとナカが締まる。
逃げようと浮かせた腰を引き戻されれば、腰を激しく突き上げられ……
……まるで、孕ませるかのように、先輩の楔がズンッ、と強く打ち込まれた。
「やぁっ……」
「……ぅ、…ッ!」
ドクドクンッ
先輩の滾ったものが、僕の腹の中に押し流される。
果てた後……先輩は脱力し、ベッドに全身を沈めた。
……え、えぇっ……!
状況が解らなくて、キョロキョロと辺りを見回す。
怪しげなライトやキングサイズのベッド。テレビから垂れ流されている音無しの卑猥な映像……
……ラブ、ホ……?
ベッドに転がった、大人の玩具。媚薬入りと書かれたローション。
男のモノを模ったそれがてらてらと光り、使用済みである事を証明している。
「……ご、ごめんなさっ……!」
慌てて先輩から下り、両手をついて頭を下げる。
「ぼ、僕……あの、その……」
『お前、酔うと……無防備に誘う癖があるから……』
カズの言葉が頭を過る。
……先輩を、僕……強引に……?
ど、どうしよ……
「なに……お前が謝ってんだよ……」
先輩が、くすりと笑う。
「合意の上、だろ?」
シャワーを浴びて、先輩とラブホテルから出る。
……よりによって、職場の先輩と……なんて……
チラリと隣を見れば、先輩はそれ程気にしていないみたいだ。
「……そんなに俺に惚れたか?」
「えっ、……あ……」
チラリとこちらに流し目をした先輩と視線がぶつかる。
解んないけど、顔が熱い……
慌てて顔を逸らすけど、上気した頬はなかなか戻ってはくれない。
「んじゃ。……このまま、付き合っちまうか?」
口角を上げ、先輩がさらりと言ってのける。
「………」
先輩は、頼りがいがあって仕事もできる。
丁寧だから、依頼者から信頼されてて……職場でも皆から慕われて……
男らしいし優しいし、どちらかと言えば格好いいし、どことなくナツネくんに似ている所がある。
………でも、僕にはカズがいる。
カズしかいないんだ……
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