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第9話

「……ごめん、なさ……」 「なにマジになってんの?」 声を遮るように、先輩がサラリと笑って言ってのける。 「……まぁ、でも。 今度あんな顔して俺の誘いに乗ってきたら……心も丸ごと全部、俺のモンにしちまうからな」 「………!」 せんぱ…… 「……いい、ですよ」 もう、こんな失態はしない。 カズの言うように、お酒は飲まない。 「おっ、言ったな?」 先輩が笑顔を向ける。 「覚悟しとけよ」 そう言って先輩が意地悪く笑う。 多分、僕を気遣って言ってくれたんだ…… 「……ただいま」 玄関を開け、靴を脱ぐ。 部屋の奥からドタバタと騒がしい足音がして、カズが姿を見せた。 「おかえり」 そう返したカズに、正面からぎゅっと抱き締められる。 「……ごめん」 「え……」 「伊江に飲むなって言っておいて、俺、外で飲むなんて言ってさ……」 「………」 「それに、考えてみたら……伊江の事そうやって縛ってる時点で、信用してないのと同じだなって」 もしかしてカズ……僕の為に、飲んで来なかったの……? カズを真っ直ぐ見上げれば、明らかに素面だと覗え、胸の奥からじわじわと罪悪感が込み上げてくる。 「……ごめん、カズ」 キュッと締まる喉奥から、なんとか声を絞り出す。 「僕……少し、飲んじゃった」 そう正直に告白すれば、カズは僕の頭をぽんぽんする。 「……俺のせい、だろ?」 「………」 カズ…… なんでこんな時まで…… その優しさに、ぎゅっと胸が締め付けられる。 バカだな、僕。 カズはいつだって僕の事を考えていてくれているのに…… ……なのに、僕は……一人ふて腐れて、当て付けみたいにお酒飲んじゃって。 それで、先輩と……… 「………!」 ハッと我に返り、カズから視線を逸らす。 「……いや、違っ、……」 「伊江」 焦る僕を、カズが全てを包み込むように優しく抱き締める。 「いいから全部、俺のせいにしとけよ」 「………」 嫌な汗が背中を伝う。 ……ど、どうしよう…… この雰囲気では、先輩との事を言い出しにくくなり、 かえって口が裂けても言えないのでは……という状況に陥ってしまった。 「なか入ろ」 「……う、うん」 カズに肩を抱かれながら、部屋へと入る。 その首元には、先輩に意地悪く付けられた……赤い刻印。 この後僕は、一緒にシャワーを浴びたカズに発見されて…… 風呂場で、そしてベッドの上で 熱く激しいお仕置きを受ける事になるのだった。 ♡おしまい♡

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