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第2話入部希望

 校舎の二階の一室で、先輩の男四人がショックを受けていることなど知る由もなく、その美少年は、キラキラオーラを振りまきつつ、体育館のほうへと消えて行った。  「かんべんしてくれよー、加藤、おまえ、合格発表のときにあの子が男の子だって気づかなかったのかよ?」  内川が大げさに天を仰いで言う。 「だって、あの日はすごい人だったし、白のハーフコートとかわゆい顔にばっか目が行って、下に何を穿いているのか、なんてまで……、あ、ちょっと待てよ!」  涙目になって弁解していた加藤が、不意になにかに思い至ったみたいな声をあげた。 「ほら、よくドラマとかであるじゃんか。本当は女の子なんだけど、なんか理由があって男の子のふりをして学校生活を送るっての。あれなんじゃね? あの子も。そうだよ、きっと」  必死に主張する加藤に、橘たちは呆れはてた。  さて、その新入生は、加藤の言うとおり女の子なんだけれど、男の子の制服を着ていた――なんていうことは、勿論なく、当たり前だが、れっきとした男の子だった。  はましたたもつ、という名前からも分かるし、声も、男っぽいとはいえないけれど、明らかに女の子のものじゃなかった。  橘がなぜ、学年が違う彼の名前や声をいち早く知りえたかというと、入学式の翌日の、始業式の放課後、彼が橘が所属する陸上部へ入部希望にやって来たからだ。

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