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第4話 かわいい新入部員

「えーと、君は……」  (たちばな)が促すように問いかけると、 「一年一組の浜下保(はましたたもつ)です」  彼はそう言って、もう一度深々とお辞儀をした。 「一組の浜下くんね……」  橘は部室のテーブルの端に置いてある入部希望用紙を保へ渡す。 「この紙に、浜下くんのクラスと名前を書いて、親御さんと担任のハンコを押してもらってきて」  橘がにっこり笑いかけると、保は真っ赤になってうつむいた。  だが、すぐに顔を上げると、また橘をジッと見つめてくる。  大きな黒目がちの瞳がなんとなく熱っぽく潤んでいるように見えて、橘は少しときめいてしまった。  しばし二人は見つめ合う格好になる。  先に我に返ったのは、橘のほうだった。 「あ、なに? 浜下くん。オレの顔になにかついてる?」  そう聞くと、保のほうもハッとし、我に返ったようだ。 「あ、いえ。すいません。じゃ、この用紙書いて、明日また来ます」  そしてまた丁寧なお辞儀をしてから、橘の後ろにいる他の部員たちにも、 「よろしくお願いしますっ」  と、またまたペコリとお辞儀する。  それから、彼は部室を出て行こうとして、ふとなにか思い出したように振り返り、橘を見た。 「あの……、保って、呼んでください。橘先輩」  白い頬をピンクに染めて、そんなふうに言葉を紡ぐと、部室をあとにした。  保が去ったあとも、部室には彼の残したいい香りと、キラキラした空気が漂っていた。

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