55 / 55
第55話 大切な人
戻ってきたウサギのマスコットを胸に、保が温かな幸せに満たされていると、ふと橘が呟いた。
「実はさ、新しいウサギをオレが作ろうかとも考えたんだけどね」
「えっ……?」
彼の言葉に保はびっくりしてしまった。
「でも作り方が全然分かんなくてさ、ネットでマスコットの作り方とか検索してみても、よく分からないし、オレのウサギを見て、どんなふうに作られているのか知ろうとしても、やっぱりまったく分からないし」
そんなことを言う橘に、保は胸の奥から愛しさと切なさが込み上げてきて、また泣いてしまいそうだったから、涙を笑いに変換した。
「あはは……」
橘は保の肩を抱き寄せて、囁いた。
「保、今度、オレにマスコットの作り方教えてくれる?」
再びびっくりして、彼の顔を見る。
「え? 本気ですか!? 先輩」
「んー、半分本気、半分冗談、ってところかな」
「……どっちなんですか?」
保がちょっぴり拗ねた顔をしてみせると、
「だってさ、保に個人レッスンなんかしてもらったら、オレ、途中でおまえのこと押し倒してしまうから、多分、いつまで経っても、マスコット作りは覚えられないと思うし」
「……先輩ー」
保が真っ赤になってしまうと、橘は頬にチュッとキスを贈ってくれた……。
ともだちにシェアしよう!