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五空間目①
「……ハッ!?」
目が覚めて最初に見えたのは、大量の水滴が付いた白い天井だった。
「知らない天井だ…」
思わずそう呟いてみたのだが、この発言は全くの嘘である。
結構見慣れている。というか、ここ一ヶ月の間毎日見ているお風呂場の天井だ。
いつの間にか、入浴剤入りのお湯に浸かって俺は寝ていたらしい。
ローズの匂いが疲れを癒してくれてる。
「……まさかの、夢落ち…?」
なんという濃厚過ぎる夢。なんという悪夢。
風呂場でうたた寝なんてしているから変な夢を見てしまったんだ。そうに違いない。
それに最近は全然抜いていなかったしな。やっぱりいくらオカズがなくても、同室者が居るといっても、身体のためには定期的に抜いてあげた方が良かったみたいだ。
でもだからといって、いくら何でもガチホモの夢はないだろう。最悪の目覚めだ。
どうせなら可愛い巨乳ちゃんに挟まれる夢でも見たかった。もしくは幼女と戯れる夢を切実に希望。
「ハァ…、腰が痛い」
「そりあ悪かったな」
「………ッ、!?」
誰か居るとは思っていなかったため、おもいきり独り言を呟いていたのだが、耳元に低い声で言葉を返されて死ぬほど驚いた。勢い良く後ろを振り返ると、先程まで夢で見た(と思っていた。思い込んでいた。思い込みたかった)相手が実際に居たものだから、おもわず悲鳴を上げてしまった。
「ぎゃあああッ!?」
「……、うるせ…」
「な、な、っ、な、なな何で…、」
「有希が途中で気を失ったんだろ?」
「……ッ、」
「流石にヤり過ぎた。すまん」
入浴剤のせいでパッと見は分からなかったが、神田さんは俺の腹部に手を回して抱き寄せたまま俺の下に居る。つまりは、俺を膝の上に座らせているのだ。
「…夢、じゃなかった」
「あ?夢…?んなわけねえだろうが、タコ」
現実逃避すら許されないこの世界。仕舞いには暴言すら吐かれた。
俺は何にも悪くないのに。被害者なのに。本当に世知辛い。俺にはこんなシビアな世界では生きて行けないよ。
「………強姦魔。逮捕されろ…」
「途中から強請ってきたのはお前だぜ?」
「…っ、う、嘘言うな…!」
「バーカ。腰まで押し付けて喘いでいたくせによく言う」
「………く、ッ」
途中から和姦になろうが何だろうが罪は罪だろうが!ふざけんな。
……そ、それに。腰まで押し付けた、なんて…。
『ん、っ、ひぃ、ひんッ、ふあ、ァ』
『……気持ちいいか?』
『ん、ん、っ…きもち、っ、ふぁ』
『…っは、ぶっ飛んでるな』
『もっと、…ッ、もっと、ギュってして、よっ』
『こうか?』
『っ、んう、…もう少し、…あッ、あ、…強く、して?』
『自分から腰まで押し付けて……やらしいな』
『ああっ、ン、…だって、ぁ、あっ、きもちい…もん』
あ、してたわ。
これ以上歯向かうと、思い出したくないものまで思い出しそうなので大人しく黙っておく。
それに男なのに男に掘られました、なんて警察に泣き込む真似は出来やしない。
しかもそれが国民的イケメン俳優×デブスという組み合わせだから余計にだ。そんなことを口外してみろ。きっと誰も信じてくれないどころか、俺は世間から精神異常者としてレッテルを貼られてしまうに違いない。
「…もう、離してくださいよ」
それならいっそのこと泣き寝入りした方が何百倍もマシだ。
悪い出来事は忘れた方がいい。どんなに悔やんでも俺の処女が戻ってくるわけじゃないのだから。
それに非常に不本意なことだが、後半は意識もぶっ飛んで俺も盛り上がってたみたいだし…。
しかし、神田さんは拘束している手を緩めてくれることはなく、むしろ先程よりも強く俺の身体を後ろから抱き締めてきた。
「ちょっ…、神田さん?」
「もう少しこのままでもいいだろ」
「…い、いいわけないじゃないですかっ」
この体勢がどれだけ恥かしいのか、この人は何も分かっちゃいない。
つーか、腹の肉を揉むな…!
「離せ…っ、」
「どうせ一人じゃ動けねえんだ。大人しくしてろ」
「う、動けます!」
「阿呆か。立てもしねえよ」
どんだけヤったと思ってんだ。と、腹が立つことに開き直って、いけしゃあしゃあと放つ神田さんの腹に肘を入れてやった。だがしかし、水中だったため、全然ダメージが与えられなかった。
「……四回?」
「正しくは五回とプラスアルファ」
「…プラスアルファ……?」
何ソレ、怖い。
自分が思っていた回数よりも一回多いことにも酷く驚いたが、それよりも意味深であるプラスアルファの存在の方が気になる。俺のことを好き勝手し過ぎだろ。
「訊きてえか?」
振り返ればニヤリと口角を上げて笑う神田さんが居た。
正直に言えば聞きたくないのだが、自分の身体のことだ。何をされたのか物凄く気になるため、嫌でも聞かざるを得ないだろう。
「…き、聞きましょう」
「気絶したお前の後処理をしていたんだが、ケツ穴から溢れ出る俺の精液を見てムラッてきたから、先だけ挿れて射精した」
「…………」
それは回数がもう一回プラスされるんじゃないだろうか。
…というか、コイツ本当に最低だな。シネ。
「安心しろよ。挿れて射精しただけだ。自分の手でシコったから問題ねえだろ?」
「…………」
安心も出来ない上に、問題大有りだろうが。クソ野郎。
「あとは、」
「ちょ、っ、…まだあるんですか?」
「ただ気絶した有希をまんぐり返しの状態にして、綺麗に洗い流した穴を舐めしゃぶっただけだっつーの」
「は、はぁっ!?」
イケメン俳優が何してるんだよ。
……ドン引きだ。
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