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五空間目⑤
後ろから抱き締めるように身体を拘束されたまま、下から腰をゆさぶられて、やっと気付いた。
「(こいつ、まだ勃起してやがる…!)」
それを理解して反射的に逃げようと身体を動かしたのだが、俺の足腰は上手くいうことをきいてくれない上に、がっしりと拘束されているため、逃げることは出来なかった。
「や、やだ!もう、む、無理、ですッ」
絶倫とかそういうレベルじゃない。
…化け物だ。性欲モンスターだ。このままだと性欲の捌け口にされて、殺されちゃうよ。
頭を左右にブンブンと振って、無理だと必死に訴える。
すると恐怖のあまりいつの間にか涙を流していたのか、神田さんは俺の目元を、その無骨な指で拭った。
「…分かってるって。流石に突っ込みはしねえよ」
「……神田、さん…!」
だったら、俺、休んでいいよね?お布団で寝ていいよね?もうゴールしてもいいよね?
某アニメの名台詞が出るくらい心に余裕が出来た俺は、今度は違う意味で涙を流した。
……だが。
「だけど、素股くらいなら大丈夫だろ?」
神田さんの台詞に、俺は違う意味で、人生のゴールテープを切りそうになった。
というか、ショックと怒りで血管が切れそうになった。
「ふ、ざけんなッ!バーカ!」
「あ゛?突っ込むぞ、ゴラ」
「……ひッ!?嘘です!ごめんなさい!」
だが俺の怒りが爆発したところで、神田さんには何一つダメージを与えることなんて出来やしない。むしろ俺がカウンターを喰らったくらいだ。酷い。俺は何一つ悪いことなんてしていないのに。何で俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだ。何で俺がこんな性欲モンスターと同室になったんだよぉ。
「馬鹿、嘘だよ。泣くなって」
「……うぅ。だったらもう、セックスするなんて、言いませんよね?」
「それとこれは別だろ」
「畜生め……鬼っ、悪魔!」
これ以上突っ込まれたら、俺の尻が爆発するぞ。だがその時は、神田さんご自慢の極太ペニスも道連れにしてやるからな。
「素股はセックスに入るのか?」
「…知りませんよ。というか、絶対に嫌ですからね」
チェリーボーイである俺に聞くな。まあ、ネットのお陰で知識は結構豊富だけど。
つーか、神田さんはどれだけ素股がしたいんだ。たとえ俺のものが極小だとしても、男の物と触れ合うんだぞ。絶対に嫌だろ。………いや、変態な神田さんのことだ。「だが、それがいい」とか言いそうだ…。
「仕方ねえな。それなら、パイズリくらいならいいだろ?」
「……はぁ!?」
「これなら有希は何もしなくていいだろ?」
なんで自分が譲歩してやっているお人好しのような態度で居るんだよッ!バーカッ!
というか、突っ込み所がありすぎだろ!
まず。
「俺におっぱいはありませんっ!」
大前提にコレを指摘させてもらいたい。
「あるじゃねえか。…ほら」
「ぎゃっ!?」
神田さんはそう言うと、背後から俺の贅肉たっぷりの胸元を、モニュモニュと揉んできやがった。
エロ親父のような言動に流石の俺もドン引きだ。
「こ、これはただの脂肪です…!」
女性の神秘的なおっぱい様とは訳が違う。むしろ比べること自体がおこがましい話だ。
女の人の可憐で柔らかそうで美味しそうな、おっぱい様と比べると、俺の両胸に付着したコレなんかは、ただの脂肪だ。贅肉だ。脂身たっぷりのムネ肉なんだ。そこらへんのスーパーで売られている豚や鳥のムネ肉よりも価値がないぞ。需要など全くない。むしろなくなってくれた方が俺も嬉しい。
「まあ、お前がどう思ってようが構わないが。それならそれで、別にいいだろ?」
「全然よくないです!」
「パイズリくらいしたって、何も減りゃしねえよ」
「減りますよっ!主に俺の神経と自尊心が!」
「……チッ」
何で俺が聞き分けの悪い子みたいになっているんだろう。聞き分けが悪いのは、確実に神田さんの方なのに。
「……だいたい、」
「…あ?」
「何で俺なんかに手を出すんですか…?俺に手を出すくらいなら、一人で処理した方がいいでしょ」
見た目的にも、性別的にも。俺がホイホイと身体を差し出す阿婆擦れ男なら手間も掛からないだろうけれど。
拡張もされていないので簡単に挿入出来ない上に、ギャーギャーと騒いで抵抗するのだから、それなら女体でも想像しながら扱いた方が楽だし、興奮するに決まっている。
何だ?それとも、オナネタが尽きたのか?毎日阿呆みたいにシコるからじゃないか?…知らないけれど。とにかく、俺に手を出す神田さんのバーカ。性欲モンスターのばーかッ。
「それは、あれだろ」
「……何です?」
「お前だから、じゃねえか?」
「…は?」
俺だからなんだよ。神田さんから見たら、そんなに俺は簡単に落ちそうな男に見えるのか。
「俺はそこまで安くないですっ」
「あ?……ああ、いや、そういう意味ではなく、」
「じゃあ、どういう意味なんですか?」
「だからそれは、お前が、……って、別に理由はどうでもいいだろ」
煩い、ヤらせろ。と何を開き直ったのか知らないが、直球で不満をぶつけてくる神田さんを、俺は睨み付けてやった。…うるさいのは、あんただろ。
…ハァ、もうどうでもいいや。俺は早くフカフカのお布団で寝たい。
「……わかりました。でも……挟むだけ、ですよ?」
後ろに挿入されて、肉体的悲鳴を上げるくらいならば、パイズリの方が何倍もマシだ。
精神的疲労は、布団の中で後で癒してもらおう。
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