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五空間目⑥
「おら、咥えろ」
「…………」
この状態でそんな台詞を吐かれると、違う意味で捉えてしまいそうで非常に嫌なんですけど……。だけど俺はもう文句を言う元気もなく、神田さんに言われた通りに、素直にたくし上げられた服の裾を口に咥えた。
「(AVでありそうなシチュエーションだなぁ)」
まあ、神田さんは鬼畜物のAVばかり好んでみてそうだけど。拘束プレイとか、焦らしプレイとか、玩具プレイとか、輪姦ものとかね。AVを見て欲を晴らせない上に、生身の女の人も居ない。そうなったら溜まる物は溜まっちゃうと思うけれど、だからって俺のような奴にこんなことをしようと思うとは……流石の俺も引いちゃうよ。
これってずっと咥えていたら服に俺の涎がいっぱい付着しそうだなぁとか、くだらないことを考えながら、俺は露になった自分の胸元に視線を落とした。
「(…確かに悲しいことに、頑張って寄せたら少しは挟めるかも)」
だがそれは、頑張って、頑張った上に肉が寄るくらいだ。
神田さんはこれだけの隙間に挟んで、本当に満足するのだろうか。……もしかしたら後で「足りねえから、ケツ貸せよ」とか言われるかもしれない。それは絶対に嫌だ。何とかこれで気が済んでくれたらいいけど。
「あ、ちょい待て」
「……ん?」
神田さんはそう言うと、咥えさせていた服の端を引っ張り俺の口の中から出すと、そのまま神田さん自らが服を上げたまま固定した。…いったい何だと言うんだ?
「口の中に唾液溜めてろ」
「………?」
なんで?嫌だよとか思いつつも、そう言われると、いつも自然にやっているのだろう唾液の処理の仕方が分からなくなり、俺の意思とは反対に口の中に唾液が溜まっていく。
「飲み込むなよ」
「(…あ。しようと思ったことを先手を取られて指摘されてしまった)」
「……ほら、胸に垂らしてみろ」
「!?」
俺はそこまで言われて、やっとコレの意味が分かった。
……俺の唾液を潤滑剤にでもする気かよ。シネ。へんたい。
唾液を飲み込まないまま、おもいきり嫌そうな顔をしたら、それはもういい顔をして神田さんは笑った。
「(イケメン…滅びろ…っ)」
勿論、このまま無視して飲み込んでやろうとも思ったが。そうすればそうしたで、もう一度唾液を溜めるという工程を最初からやらさせられるか、もしくは「いい度胸じゃねえか。ケツ貸せ」と言われてしまいそうだと考えた俺は、……本当に、ほんっとうに!嫌だけど、不本意ながらも言われた通りに……自分の胸元に溜めていた唾液を垂らした。
ツゥーと落ちていく透明色の唾液。
この俺の唾液が、今から卑猥なことで使用されると思うと、……胸が痛い。
「いい子だ」
だけど俺のげんなりとした気分とは正反対に、目の前に居る男の機嫌はすこぶる良い。
……だって、俺の頭をヨシヨシと撫でたくらいなんだから。
「(こうやって、幾多の女を堕落させてきたのか)」
…だが、俺はそう簡単に落ちてやらないからな。そういう意味を込めてギッと睨んでみたものの、神田さんには俺の睨みなど効かないのか、それとも俺の意思などどうでもいいのか分からないが、俺の表情は見ずに、ただただずっと胸元でテラテラ光る俺の唾液を凝視していた。
「ジッとしてろよ」
そして再度俺に服の端を咥えさせると、神田さんは既に臨戦状態のものを俺の目の前で取り出した。……改めて見ると、本当に凶悪物だ。こんな巨大物が俺の尻の穴の中に入っていたとは俄かには信じ難い。だが、これを見て俺のケツがズキズキと痛みを思い出させてくるのだから間違いはないのだろう。
…化け物の持ちものは、やっぱり化け物だということか。
俺にはもう抵抗出来る気力も元気もなく、素直に頷く。
そして神田さんは俺の左胸に付いた贅肉と、右胸に付いた贅肉を寄せた。
「……、ッ、ん」
その際にわざとなのか偶然なのか、人差し指と中指を使って、俺の乳首を挟んでくるものだから、予期せぬことにおもわず上擦った声が出てしまって……羞恥のあまり死にたくなった。
それで若干顔を赤らめていると、満足そうに鼻で笑う神田さん。それがまた俺を辱める原因で、このまま抵抗の一つとして暴れようかと考えていると、それより先に僅かに出来た胸の谷間に、神田さんはペニスを宛がってきた。
「………、ぅ」
神田さんのものが俺の唾液の滑りを借りて、胸元でヌールヌルと動く様は……何というか……物凄く、卑猥だ。
パイズリとは男のロマン。
必ずしも男は一回や百回くらいは夢を見ていることだろう。……それは恥かしくも俺だって一緒だ。ロリフェイスでロリ声のマシュマロ巨乳ちゃんの胸の谷間に挟んでもらって射精するというシチュで、数回はオナったことはある。というか、エロゲを見てオナったことがあるくらいだ。
……だが、今はどういうことか。“してもらう側”である俺が、なぜに“してやる側”に居るんだ。
「はっ、すげえ…エロい」
男の胸に挟んで擦るだけでエロいわけがあるか馬鹿者。……とツッコミを入れたいものの、視線を下げてその光景だけ見ると否定出来なくなりそうだから困る。
「……ッ、っ」
ちっぱいのため嫌がるものの、男に乱暴に胸を寄せられて、ほんの少し出来た谷間を陵辱される、という状況に見えてしまって少しだけ興奮してしまった。なんかこう考えると、被害者ながらも、すっごくナイスシチュエーションだ。いや俺は、巨乳派だけどね。
……だけどこの間近で見ている光景が自分がされていると思わず、間近で見ているだけと考えると……中々いいな。うん。
いっそのこと、妄想の世界に逃げてしまおうか。
……そう考えていたものの。
「…有希、俺を見てろ」
何故かそう言われてしまい、俺は渋々ながらも胸から視線を外して、神田さんに言われた通りに素直に従う。
……すると、ぶつかり合う視線。
キョトンとしている俺とは真逆に、俺を見る神田さんは目を逸らしたくなるくらいに熱っぽくて。……何か、変な感じだと思った。
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