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七空間目④
「……俺に飽きたのかよ?」
布団に顔を埋めてボソリと呟いた声は、誰の耳に届くこともなく消え失せた。
……だってそうだろ?あれだけ欲求不満を訴えて俺なんかに手を出してきた人が、こんなにも呆気なく手を引くなんて、それしか考えられない。
もしくは正気に返ったとか。
「……ふんっ」
ま、まあ、別に理由なんてどうでもいいけどさ。こっちは変なセクハラが止んで、万々歳だ。
頭なんかは……ほら!自分の手で撫でればいいだけの話だし。
そう思いながら、自分の手で自分の頭頂部を擦ってみる。
「………」
そうすれば虚しさと不快感が湧き上がってきた。全然気持ち良くない。嬉しくない。髪の毛がモサモサするだけだ。
「っ、」
………自分では駄目だ。
他の人じゃないと…、神田さんじゃないと、ダメだ。
あの大きくて温かくて、乱暴だけど、優しい手じゃないと。
「…んっ、……ふ、ぁ…ッ、」
スウェットの中に手を入れて、下着越しに自身の物に触れる。自分でココに触るのは何時ぶりだろうか。今まで性欲らしい性欲も働かず、たまーに溜まったものを事務的に吐き出すだけだった。
「ぁ、っ…ん……は、ぅ」
……だけど今は、自分の意思で気持ち良くなりたいから触れている。神田さんにされていたことを思い出しながら、触れている。
「んっ…ひァ、ッん」
シーツを噛んで声を押し殺す。
「ふぁ…っ、ん、ッ、ん」
だけど鼻から漏れる声は完全に押し殺すことが出来ない。
……でも、きっと大丈夫。神田さんの寝起きは悪いから。だから、大丈夫。気付かれはしない。
「あ、ん……っ、ふ、ぁ……ッ」
そう安心してから俺は、下着越しから触れていただけの手を、更に中に入れ込んで直接触れた。
「っ、ッ、んっ、ん、ッあ」
神田さんが気に入ってくれていた手で、根元から先端まで勢い良く擦り上げる。それだけで俺の手の中の物は、大喜びで涙を流している。ぬるぬるの液体の力を借りながら、更に手の動きを速める。
「…あ、っ、ッ…ん、っ……きもちぃ」
漏れる声、ぬちゃぬちゃと鳴る水音。この声と音のせいで、横で寝ている神田さんを起こしてしまったらどうしよう。
そう不安にはなるけれど、今更手の動きを止める事は出来そうにない。
「……ん、ッ、ん、っ、ん、っんん!」
…頭の中が蕩けてしまいそうだ。
そう思ってしまうほどに、久しぶりの刺激は強過ぎた。
「(……こ、こんなの、絶対、頭バカになる…っ)」
神田さんが俺にしてくれたことを思い出しながら、先端部分に爪を立てて尿道を軽く弄り、雁首を強く擦る。
「ひっ、っ、んん、ッ」
人前でオナニーをしているという事実が、更に興奮剤となっており、俺は口を半開きにして舌を出しながら喘いだ。隣に神田さんが居るとかそんなことどうだっていい。
今はもっと、もっと気持ち良くなりたい。
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