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十一空間目②
「…………あ……っ、」
そして神田さんは後ろから俺の身体を強く抱き締めてくると、そのまま俺の肩口に顔を埋めてきた。
「……だけど、お前と離れて分かったよ」
「神田さん、」
「とっくに俺にはお前が必要だったってな」
神田さんはそう言うと、俺の顎を軽く掴み後ろに向けさせると、その体勢のまま俺の唇にキスをしてきた。深い口付けではないのだが、分厚い唇で覆うようにチュッ、チュッと吸い付かれると、甘い雰囲気も伴ってそれだけでも変な気分になってしまう自分が居る。先程あれほど散々濃厚なセックスをして精を放ったというのに、これだけで下半身が疼いてしまっている。
「あ……っ、ん」
「有希と二人で過ごしたあの時のことを忘れられなかった」
「……ん、んっ……、俺も、です」
「身体が、心が、お前を欲して止まなかったよ」
「は、っ……ふ」
「何度お前を想って、一人で精を処理したことか……」
「ん……んっ、んぁ」
「言ってること分かってるか?有希のこと何度も頭の中でグチャグチャに犯してオカズにしてたんだぜ?」
「か、神田……っ、さん……ふっ、あ」
甘い口付けの合間に、熱い吐息混じりにそのような嬉しいことを言われて、俺は胸をキュンキュンと昂らせながら神田さんに与えられる感覚に溺れる。
「(……神田さんも、俺と同じだったんだ)」
あの夏共に過ごした出来事が忘れられないくらい、俺のことを想ってくれていたんだ。そして俺と同じように、自慰をしてくれていたんだ。それを知れただけでも嬉しくて堪らない。その感情が昂ぶってしまい、俺は自ら少し身体を後ろに向けて、彼の頬にソッと手を添えた。
「ん……ん、ふ……っ」
「……はっ、だから有希が俺のサイン会に応募してくれた時は、すげえ嬉しかった」
「あ、っん……だって、ずっと会いたかったから……」
「絶対に二度と離してやらねえって思ったよ」
「か、んださ……、っ、んん」
「久しぶりに俺に会ったせいか、滅茶苦茶に緊張をした有希はすげえ可愛かった」
「……っ、恥ずかしいから、忘れてください」
「はっ、嫌だよ」
「ん、ん……ぅ」
あの日の俺は、緊張をし過ぎて借りてきた猫のような状態だった。
本当の俺の姿を知っている神田さんにあの姿を見せてしまったのは恥ずかしいけれど、久し振りに超有名人の神田皇紀に会ったわけだし、それに周りにも大勢の人も居たわけだから仕方ないのだと思いたい。
「まあ、携帯番号を書いておいたのに、随分と焦らされてしまったけどな」
「……だ、だって、気付かなくて……」
あの時は色々とショックを受け過ぎて写真集を見る勇気がなかったんだ。
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