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十一空間目④
今まで両親や弟や友達から全く愛情を貰えていなかった分、もしかしたらどんな愛情でも嬉しいと感じてしまっているのかもしれない。神田さんに与えてもらう全てが嬉しくて堪らないのだ。
……あれ?だけど弟の帝に好きだと言われた時にはこんな気持ちには一切ならなかったな。それは帝が俺の弟だからなのか、それとも…………、
「……って、あっ……!!」
甘い時間をぶち壊してしまうかのように突然大声を出せば、神田さんは俺の首元に埋めていた顔を上げて動作を止めた。
「……どうしたんだ、急に?」
「あ、いえ。早く家に帰らないと変に心配されそうで……」
神田さんと再会できた喜びで時間を忘れていたが、もうすぐ帝が家に帰って来る時間になる。一応出掛けるということを連絡していたけれど、できることなら帝がバイトから帰って来るよりも先に家に帰っておきたい。……そして、関係を壊してしまいそうで怖くてずっと後回しをしていたけれど、帝にきちんと『俺には好きな人が居る』ということを伝えておきたい。
「……そうか。もうそんな時間か」
「充実し過ぎて時間なんか忘れてました」
「ああ、俺もだ。できることならもっと一緒に居たいし帰したくねえが、そういうわけにはいかねえよな」
「……神田さん」
隙間なく抱き合っているため神田さんの物が熱を持って硬く滾っているのは分かっている。だけど神田さんはそれをどうするわけでもなく、俺の唇に一度触れるだけのキスをすると、ポンポンと頭を撫でてくれた。
「……まあ、お前のところの家族事情はよく分かっていないが、心配されてるってことは大事に想われてるってことだろ。早く帰ってやれよ」
「は、はい。ありがとうございます。また時間がある時にでも話を聞いてくれると嬉しいです」
「ああ、勿論だ。もし何かあったらすぐに俺に連絡しろ」
「はい」
両親は相も変わらず音沙汰もなしで、弟の帝には普通ではない感情を抱かれているけれど、それでも俺には神田さんという恋人が居てくれるのだと思うと、とても心強くて安心する。折角再会ができて晴れて両想いになれた神田さんともうお別れするのはとても名残惜しいけれど、贅沢をいっている状況ではない。
「送って行くから、着替えて来い」
「……あっ、いえ。自分で帰るので大丈夫です」
「そういうわけにはいかねえだろ」
「駅も近そうだし一人で帰れます。それになにより、俺なんかと一緒に居るところをもし誰かにバレると厄介ですよ」
「バーカ。餓鬼が変な気を遣うな。ほら、行くぞ」
記者の存在を気にして遠慮をしたのだが、神田さんは気にせず俺を送ってくれるそうだ。
「は、はいっ。ありがとうございます」
ボフッと頭を軽く叩かれた際の神田さんの体温さえも愛おしく感じながら、俺は急いで身支度を終えたのだった。
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