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旅行3

――ああ、こんなにも幸せなことなんてあるだろうか。本当に神田さんが好き過ぎて、愛おし過ぎてワンコのように腹を見せて絶対服従を誓ってもいいくらいだ。……と一瞬思ったけれど、いくら何度も見られているといっても、俺のだらしないお腹を堂々と見せるのはやはり抵抗があるので止めておこう。それに神田さんも俺のお腹を見せられても困るだけだ。 そんなくだらないことを真剣に考えている間も、神田さんは優しく俺の頭を撫でてくれている。とっても気持ちが良い。神田さんは撫で上手だ。もし神田さんが美容師になったら頭に触れてもらいたいだけの人できっと溢れかえるだろう。予約なんか一年以上取れないかもしれない。 それくらい彼に優しく髪の毛を梳かすかのように撫でられるのが、すっごく気持ち良いのだ。 「神田さん、交代しましょう!」 「交代?」 「俺も神田さんをヨシヨシしたいです!」 だけど俺ばかりが気持ち良くなってもどうしようもない。ここは運転でお疲れである神田さんをたっぷり癒してあげたい。そう思った俺はかなり名残惜しく思いつつも上体を起こして、自分の太腿に頭を置いてくれるように手で軽くそこを叩いてみせた。 「……ダメ、ですか?」 ……もしかしたら断れてしまうだろうか。俺がいつも甘えさせてもらってばかりで、こうして逆に神田さんが俺に甘えてくるようなことなど一度もなかったため、そういうことが嫌いなのかもしれない。それはそれで仕方ないかもしれないけれど、是非とも嫌でもなければ俺にも神田さんを癒しを提供してあげたい。 そう思っていると、俺の想いが通じたのか、神田さんが俺の太腿に頭を置いて寝転んだ。 「…………か、神田さん……!」 「ふっ。案外こういうのも悪くねえな」 「俺の太腿悪くないですか……?」 「ああ。寝心地は最高だ」 神田さんのその言葉に内心激しく喜んでしまう。「俺デブでよかったー!」と思ってしまったくらいだ。普通の男性よりも肉付きが良すぎるため弾力はあるだろう。 それにこの体勢のせいなのか格好良いはずなのに、少しだけ神田さんが可愛くも思える。俺は改めて神田さんにときめきながら、先程してもらったように彼の頭を撫でていく。見た目以上に柔らかく撫で心地の良い上品な髪質で、撫で心地も最高だ。だけどこれは俺が満足するだけではダメなのだ。神田さんにも気持ち良くなってもらいたい。 「……気持ち良いですか?」 「ああ」 「本当ですか?良かったです」 小さく一言だけ肯定の言葉をくれた神田さんに、よりやる気が出てしまい俺は真剣に彼の頭を撫でていく。 …………すると、その時だった。

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