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旅行2

「……うわぁーっ!すっごい綺麗なところですね!」 まともな旅行すらも小さい頃にしか行った記憶がないため、こういう本格的な旅館に神田さんと来れたことが嬉しくて堪らない。しかもなんと大浴場とは別に、部屋ごとにも露天風呂が付いているらしくて、他の人達に俺のブヨブヨな身体を見せなくて済みそうなのが安心できて嬉しい。 「神田さん本当に連れて来てくれて、ありがとうございます!……それなのに、お金のこととか、全部払ってもらって……」 「そんなこと一々気にするな。俺はそうやって有希が喜んでくれるだけで十分だ」 「……あ、ありがとうございます!」 「あんまり長い時間は居られねえが、たまには外でゆっくり過ごそうぜ」 「はい!」 今回は完璧にお忍びで旅行に来ているため、公共機関は使わずに神田さんの運転で此処まで来た。三時間以上掛かって此処まで連れて来てくれた神田さんはきっと疲れているだろうけど、なんだか今はとびきり擦り寄りたい気分だ。 そう思った俺は、座布団の上に座って寛いでいる神田さんに近寄って、少しだけ体重を預けて寄りかかった。なるべく自分の体重のことを考えて、本当に軽くだ。 「……ふっ。どうした?珍しいな」 「甘えたいなぁーって思っちゃって」 ここまで擦り寄っておきながら自分の気持ちを誤魔化すなんてできない。馬鹿正直に自分の気持ちを伝えれば、神田さんは体重を預けている俺の身体を軽く押すと、そのまま程よく鍛えられている神田さんの太腿に膝枕をしてもらうような体勢になるようにしてきた。 「か、神田さん……?」 まるで愛犬を撫でるかのように優しく頭を撫でてもらって、気持ち良いやら嬉しいやら照れくさいやらで、色々な感情が入り混じってしまい、思わず声がどもってしまった。だけどあの武骨な手でこんなにも優しく撫でられると、とんでもなく服従したくなる。 「……お、俺っ。神田さんに犬になりたいです……!」 「なんだ?お前は犬なんかで満足なのか?」 「…………え?」 愛犬になりきったかのように、神田さんの太腿と腹部の境目に顔を埋めてスリスリ擦り寄っていると、突然頭上からそんなお言葉を掛けられて、俺はおもわず顔を上げた。 ――――そうすれば、とてつもなく甘く優しい笑みを浮かべた神田さんと目が合い……、 「有希は俺の恋人じゃ嫌なのか?」 「…………っ、」 ……そんな破壊力のあることを言われて、俺の体温は馬鹿みたいに急上昇してしまった。 「い、嫌じゃないです……!お、俺……、」 「ん?」 「犬じゃなくて、恋人で大満足です……」 「いい子だ」 俺の言葉を聞いて再び優しく撫でてくれた神田さんに、再び「……ワン」と言って服従しそうになったのは秘密だ……。

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