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旅行1
「……なあ、有希」
神田さんが住んでいる高級マンションの一室でソファーに座り一緒に映画を観ていると、隣に座っていた神田さんが突然声を掛けてきた。
「どうかしましたか?」
「…………海外にでも行くか」
「……え?きゅ、急にどうしたんですか?」
「有希もいつも俺の家ばかりで飽きるだろ。かといって、俺と外で堂々と歩くのはお前に迷惑掛けるだろうし……。いっそのこと一週間くらい海外でゆっくりと過ごさないか?」
「……か、神田さん」
もしかしなくても神田さんは、俺たちが会う場所は決まって車の中か、神田さんの家か、誰も居なくなった後の事務所くらいでしか、いわゆるデートというものはしないので気を遣ってくれているのかもしれない。
「何処か行きたいところあるか?どこでもいいぜ」
「い、いえっ。俺は今のままで満足してますからそんなこと気にしないでくださいっ」
「そういうわけにはいかねえよ」
「だって俺は、神田さんに会えるだけですごく満足してますから……」
「……有希」
この気持ちに嘘偽りはない。本当の本当だ。こうして神田さんの家でまったりと過ごせるだけでも、十分過ぎるほど幸せで満足をさせてもらっている。確かに外では堂々と会うことはできないかもしれないけど、そんなこと俺は別にどうだっていいんだ。
「……えへへ。好きです、神田さん」
だって隣に神田さんが居てくれるだけで、こんなにも嬉しいんだもん。
……その気持ちを馬鹿正直に伝えると、急に神田さんに押し倒されてしまった。
「えっ、え?な、なに?なんですか?」
「…………ムラっときた」
「な、何言ってるんですか……っ?」
「有希が可愛すぎてムラっときた」
「二度も同じこと言わなくていいです……!」
俺はそんなつもりで言ったわけじゃない。それにしかも、ついさっきしたばかりじゃないか。もうこれ以上俺にはエッチをする体力は残っていないぞ。
「そういう時は、ムラっとじゃなくてキュンッとするもんじゃないですか!?」
「可愛さ通り越して性欲の方にきた」
「……あっ、ちょ……ちょっと神田さん……っ」
「可愛すぎるお前が悪い」
「ん……んっ、あっ、ゃぁ」
俺はすることを納得したわけじゃないことを忘れないで欲しい。だから勝手に俺の服を捲し上げて胸元を弄らないでくれ。
「わ、分かった!分かりましたから……!」
「……あ?なにがだよ?」
「俺、神田さんと旅行行きたいなぁって!ほ、ほらっ。海外とはいわなくても、温泉旅行とかどうですか?」
「あー、確かにそれならプライバシーもしっかりしてある旅館を知ってるな」
「そ、それじゃあ、そこに行きませんか?俺、神田さんと一緒に行きたいなぁっ」
「いいぜ。後で予定を立てよう。…………ただし、これが終わった後でな」
「やぁ、ああっ、んん……っ!」
…………結局こうなるんですね。
体力が底を付いている俺はそれ以上の抵抗などできるわけもなく、そのまま神田さんにされるがままに喘ぎ続けたのだった……。
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