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MAGIC BOX

 怜は時々、言葉の中に紛れ込ませるように俺を呼び捨てにした。迅との違いを少しでも作りたかったんだと思う。  そんなことしなくたって、俺は二人をひとつに見たことなんてないのに。  苦笑しつつ、本当は呼び捨てにされる度にドキドキしていたと、いつか教えてやろう。迅に比べて口数が少ないこいつだからこそ、そんな気になれた。  腰を上げると、背中に回された手で引き寄せられる。  重なった唇を抉じ開けて舌を入れると、獲物を狙ってじっと待っていたらしい。絡み取られ引きずり込まれる。吸い上げられて食まれる。  酸欠でぽわぽわとしつつ、立ち上がった性器に指を添え、ゆっくりと腰を下ろした。 「んんっ、入ってくる……あっ、おっき、んっああっ!」 「拓海くん、自分で腰動かしてるのわかる? んっ、あ、最高……かわいい、んちゅ、んっんっ! いっぱい突き上げてあげるから、もっと気持ち良くなって」 「うひゃあああっ、あああ、すごっ、奥だめ、やあっ! 奥、とんとん、しなっ、で……」 「んー、妬けるな。二人だけの世界作らんといて。拓海くん、こっち。手貸して?」  怜の首にかけていた腕が取られ、さっきまで俺のナカに入っていた性器を握らされる。  短時間ですっかり元通りに立ち上がっている。ごんごんと短いストロークで奥を打ち付けられながら、必死に扱く。前からも後ろからも熱い息がかけられて、おかしくなりそうだ。 「あっ、やあっ乳首つねっちゃ、んっあああ! とれる、っ」 「取れへんよ、可愛がってるだけ」 「っだめ、や、らっ、いやぁ。あ、あっやばい、なに……あっあぁっ!」  怜に弄られて立ち上がったままの乳首を迅が思いっきり抓った。  痛いはずなのにそれすら快感でナカがきゅうっと締まる。怜のかたちがわかる、血管の盛り上がりやくびれまで。恥ずかしいのに気持ちがいいなんて初めての感覚だ。気持ちよさそうな二人に、堪らなく嬉しくなる。下からの突き上げに合わせるように俺も腰を振った。 「んああっ、こし……腰が勝手に動いちゃっ、あっとまんな……、あっ! イくぅ、出る、出ちゃっ……」 「いいよ、いっぱいイって。奥突かれて乳首抓られて、俺たちにえっろいこと一杯されてイって? 」 「あっきもち、んっ、イく、奥出して、ナカ、ほしっ……あっイくっ、んんんん  !」  達すると同時に強引に後ろを向かされ迅に唇を奪われた。  悲鳴のような喘ぎは迅の口の中に消える。ぶるっと大きく震えたあと、俺の手はどくどくと吐き出した熱いもので汚れた。  腹のナカ、奥の奥に怜の熱い精子がかけられる。俺の腹で二人の才能を殺すんだと思ったら、独占欲がじわじわと満たされていくのを感じる。あんなにも勿体ないと思っていたのがうそみたいだ。二人の未来が俺で決まる。悲しさなんて、ちっとも感じなかった。  激しい突き上げから漸く解放され、今度はこっちとばかりに怜が噛みついてきた。唇だけでなく、首、肩、鎖骨に吸い付かれあっという間に赤い痕だらけになる。  同じ行為は背中にも施され、俺は到底人前では着替えられない体にされてしまった。 「……いくらなんでもつけ過ぎ」  一人残されたベッドで、ぼそりと呟く。三本のペットボトルを抱えた怜がドアの向こうから現れ、悪びれた様子もなくそれを投げて寄越す。 「見えるところには付けてへん」 「人前で着替えようと思うところがまずだめ」  ホットタオルと新しいシーツを持った迅は、更に俺を咎めるようなことを言い出す始末だ。 「ってかなんでお前らは服着てんのに、俺だけまだ裸なんだよ! せめて下着くらい穿かせろ」 「どろどろに汚れてるから洗濯してる。それに新しいの穿いてもまたすぐ汚れるで。さっきみたいにとろーって」 「何それえっろ、俺も見たかった。迅ばっかずるい」 「何言ってんの、怜のが甘やかされてるやん」  ぎゃいぎゃい騒ぎだした二人をじとっと冷たい目で睨みつつ、俺は腹の底から低い声を出した。 「おい、まず俺の体を拭くことが先だろ。それにけんかはしない約束だったよな……?」 「「はいっ!」」  慌てて二人が俺を挟むようにベッドに潜り込んだ。ホットタオルは丁度いい温度で、自分でやると言ってもそうはさせてもらえず、結局ナカを掻き出すところまでベッドでされ、羞恥で人は死ねると初めて思った。  風呂を済ませ三人でまたベッドへ寝ころがる。 「結婚か……」 「どこの国にしよか」 「任せた。どうせお前らならもうアレコレ手配してんだろ」 「今更こんなこと聞くのもアレだけど、解散させてでも逃げてやるって思わへんかったん?」 「……はあ。だからお前らはバカだよ。  お前らの一番のファンは俺だって、知らねぇの? 解散されて一番困るのは俺!  あと、いくら解散かかってても好きじゃなきゃ応えない。わかれよ……バカ」  バカバカと言い過ぎたとは思うけど、そんな黙り込まなくてもいいだろう。ちろりと二人を伺うと、目を見開いて顔を真っ赤にしていた。 「拓海くん、それはずるい」 「拓海が悪い。今日はもうこのまま寝ようと思ったのに」  目の座った二人が俺に覆いかぶさろうとするのを必死で手を突っ張って抵抗する。 「待て、無理だ! 今日は絶対無理! お前ら俺の年を考えろ。腰が死ぬ!」  仕方ないな、と大人しく横に寝直した二人の手にそっと手を伸ばす。  指を絡めてきゅうっと握ると驚いて息を飲んだ後、同じように握り返された。 「ずっと、世界中を魅了するアイドルでいてくれよ。それを支えるのが俺の仕事で生きがいなんだ。  俺は普段のお前らをもらえればそれでいい。今だって、幸せ過ぎて怖いくらいだ……」 「拓海くん……」 「だから約束してくれ。  俺を思うなら絶対にこの関係がバレないように努力してくれ。それとケンカもだめだ。勿論話し合いはしよう。小さなことで揉めたくない。……いいか、俺のことでケンカするなら俺は消えるぞ」 「わかった」 「ん。守る」  ピ、と音を立てて明かりが消える。うすぼんやりとオレンジに染まった寝室は今までで一番幸せな夜だった。

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